連続テレビ小説「カーネーション」第104回「自信」【第19週】

北村「ほんでやな。」

糸子「うん?」

北村「わいと組めへんけ?」

糸子「死んでも嫌じゃ。」

北村「何で?!」

糸子「何が悲しいて ホラ吹き男と 手ぇ組まな あかんねん。」

北村「ちゃうちゃう!」

糸子「アホらしい!」

北村「わいは 商売では ホラ吹いた事ないっちゅうねん。」

直子「いらっしゃい。」

糸子「ああ ええとこ 来た。 もう あと こいつの相手 しちゃって。」

北村「相手て 何やこら! 寝んなや お前! おいおい…。 おい これよ 知ってるけ? トラペーズラインゆうて 今年のディールの新作や。」

直子「はあ ええなあ。」

北村「せやろ? おっちゃんな これから 夏に向けて これで 一発 ドカ~ンと 打ち上げちゃろ思てんやし。」

直子「うん。 ええんちゃう。」

北村「ほんまけ? ほんま そう思うけ?」

直子「うん。」

糸子「こら。 ええかげんな事 言いな。」

直子「え?」

糸子「どこが ええんや? そんなアッパッパ。 そら これまでのディオールのラインとは 全然 ちゃうよって チョロっと目新しいだけで ほんだけじょ。 それ以上の価値ないわ ほんなもん。」

直子「ほんな事ないで。 ええで これ。」

北村「なあ。」

糸子「分かってへんなあ。 あんたもな 洋裁の道 進むんやったら よう考えられるようにならんと あかんで。 これ 日本人が着てるとこ 想像してみ? 腰のくびれもない。 丈も中途半端。 どないしたかて アッパッパにしか 見えへんわ。 こんなもん こさえたかて 売れるかいな!」

北村「ほな どんなんやったら 売れるっちゅうんよ?」

糸子「そら これまでどおりの こう… 腰が シュッと締まって ふわっと…。 やめとこ。」

北村「やめんといて! 何で? 寝んなって! おいおい…。 どうしたらええん? 言えよ!」

糸子「嫌や。 もったいない。 何で あんたなんかに 説明しちゃらな あかんねん。」

北村「寝んなっちゅうねん。 おい!」

直子「ええんやけどなあ これ。」

台所

(小鳥の鳴き声)

(千代の鼻歌)

聡子「おはようさ~ん。」

千代「おはよう。」

糸子「直子。 直子 起きてるか?」

聡子「うん。 起きてるけどなあ まだ 着替えてへん。 何や 隅っこで ショボンてしてる。」

糸子「何で?」

聡子「何 着て 東京 行ったらええか 分かれへんやて。」

糸子「え~? また あんな事 ほんまに…。 直子?! 直子!」

2階 寝室

糸子『あんた はよせな 電車 乗り遅れんで?! 分かったな!』

直子「せやけど!」

糸子『ああ?!』

直子「何 着ていったらええか 分かれへんねん!」

糸子『また 何 訳 分からん事 言うてんや! はよしいや! 分かったな?!』

オハラ洋装店

「おはようさん。」

直子「おはようございます。」

居間

糸子「あんた あんなけ騒いで 結局 それかいな。」

直子「ええんや。 中途半端な格好しか でけへんやったら これのが ましや。」

(鈴の音)

<はあ~ この けったいな見栄っ張り。 誰に似たんやろな?>

直子「行ってきます。」

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