糸子「あんた… ほんま ほれぼれすら。」
サエ「えっ 何が?」
糸子「何で そんな 根性 据わってんの? 教えてえや。」
サエ「うちはな こう見えて そない 欲張り ちゃうのや。 昔から 欲しいもんちゅうたら ただの一個だけなんや。」
糸子「何?」
サエ「男。」
糸子「ああ~!」
サエ「ウフフフ!」
<うちは 欲張り過ぎなんや。 サエみたいに 欲しいもんを ひと言で よう言わん。 自分が ええと思う服を 作りたいけど 商売も うまい事 いかせたい 時流に流されて たまるか 思てるけど 時代に後れてまうんは 嫌や>
糸子「はあ~ しょうもな。 アホらし。」
<ほんなもん 根性 据わらんで 当たり前じゃ うちが ほんまに欲しいもんて 何や?>
居間
北村「直子は ほんで 卒業したら 何すんよ?」
直子「東京の百貨店に 店 出す。」
北村「百貨店?」
直子「うん。 あんな ヤングコーナー ちゅうとこに 場所 もろて そこで 店 やれへんかて 誘われたんや。」
北村「ほう プレタポルテけ?」
直子「ううん。 最初は オーダーメードや。 ほんでも うちが有名になったら カルダンみたいに うちの名前の プレタポルテかて やったろ 思てんや。」
北村「それそれ それやぞ 直子! ほら 結局よ 安い物 いくら 数 そろえたかてよ そんなもん 大した事ないねん。
やっぱし 高い物が ぎょうさん売れんと でかいもうけに なれへんからの。 プレタポルテちゅうのは 高い物 ぎょうさん作って ぎょうさん売ったろちゅう事やろ。」
直子「せやで。 せやから デザイナーが有名やったら ほんだけでも 人は なんぼ高ても 欲しがりよるがな。」
北村「そうや! お前 タグ貼っ付けただけで おもろいように売れるんやさかい。」
直子 北村「なあ~!」
糸子「あんた まだ ほんな事 言うてんか。」
北村「はあ?」
糸子「ほんなインチキ商売 かまして 捕まったん どこの 誰じゃ? まだ 懲りてへんけ?!」
北村「いや ちゃうがな。 今回は インチキ ちゃうねん。」
糸子「恥を知れ 恥を!」
直子「捕まった? えっ 何? おっちゃん 捕まったん?」
<下には 下が あるもんで こいつは うちより アホです>
2階 寝室
(犬のほえる声)
直子「よいしょ!」
聡子「あ~ 重た!」
直子「ぐあ~ もう!」
聡子「ちょっ… ちょっと しんどい。 しんど~い!」
直子「コチョコチョ… コチョコチョコチョ…。」
聡子「ハハハハハハ…。 やめてえや!」
直子「コチョコチョ…。」
聡子「もう~ 漫画 読んでんねん。 もう。」
直子「よいしょ。 あんた。」
聡子「はあ?」
直子「どないすんよ?」
聡子「うん?」
直子「将来。」
聡子「短大 行くで。」
直子「ちゃうよ もう~。 その短大を卒業したらや。」
聡子「あ~…。 ほんなん まだ分かれへんわ。」
直子「テニスの選手になったら ええやん。」
聡子「う~ん…。 ほんでも あ母ちゃんは あんまし喜ばへんやろ?」
直子「お母ちゃん?」
聡子「うん。」