安岡家
居間
糸子「物件に負けたあ。」
玉枝「まあまあ。 うんうん。」
糸子「うちの看板は 北村の物件に負けたんや。 命より大事な看板を 譲っちゃる ちゅうてんのにやな 優子のアホは『そんなもん いらん 北村の物件のがええ』て 言いよったんや!」
八重子「せやけどな 優ちゃんも そんなつもりと ちゃうと思うで。」
玉枝「せや せや。」
糸子「何が心斎橋や! 何が物件や! 北村のボケ! 優子のアホ!」
玉枝「よしよし な! な!」
小原家
玄関前
<寂しい むなしい 昌ちゃんと恵さんにかて あない格好つけたのに 不細工な>
(小鳥の鳴き声)
井戸
糸子「あんた もう帰り。」
優子「え?」
糸子「あんたの顔 見ちゃあったら ほんま気ぃ悪い。 仕事の邪魔や。 その心斎橋の物件 もう押さえてしもてんやろ?」
優子「はい。」
糸子「ほな とっとと 先 進め。 いつから その店やる気か 知らんけどな 準備ちゅうんは 片手間にでけるもん ちゃうんや。 やるんやったら そっち 集中し。 うっとこはな あんたなんか おらんかて どないでも なるんやさかいな!」
優子「はい。 おおきに お母ちゃん。」
小原家
玄関前
<よっしゃ。 不細工なりに どないか けじめつけられたで 娘の独立 見届けたで お父ちゃん。 ちゅうて思ちゃったのに>
居間
優子「なあ お母ちゃん!」
<まあ この娘の独立の 中途半端な事>
糸子「知らん! 自分でせんかいな ほんな事。」
優子「せやかて ほんまに柄悪いねんで。」
心斎橋・優子の店
「いや そら でけん!」
糸子「でけんでは 困りますねん。 こんな汚いダクト むき出しでは 商売ならん。」
「でけん事は でけん言うとんじゃ!」
糸子「はあ? でけん ちゃうやろ?! 一旦 引き受けた仕事やったらな 最後まできっちり やらんかいな! こっちは この先 この店で 飯食うていくんですわ! やってもらわな かないませんねや!」