聡子「えっとなあ… ロンドン 行こか 思てんねん。」
優子「はあ?」
直子「ロンドン?」
聡子「うん。」
直子「旅行の話か?」
聡子「ううん。 旅行やのうてな ロンドンに 仕事しに行きたいねん。」
糸子「何やて?」
聡子「あんなあ お母ちゃん。 堪忍…。 うちを ロンドンに行かせて下さい。」
糸子「どうゆうこっちゃ?」
優子「知らん。 うち 全然 知らんで。 あんた 聞いてたか?」
直子「うちも 何も聞いてへん。」
聡子「うん… 誰にも よう相談せんかってんけどな。 うち 岸和田 おったら 一生 姉ちゃんらの手伝い役で 終わってしまうと思うねん。 姉ちゃんらの売れ残り 送ってもうて そんで どないか商売して そんなんも ええかげん あかんて思うしな。 せやさかい 誰も いてへん お母ちゃんにも 姉ちゃんらにも頼られへん どっか別んとこで 一から 一人で やりたいんや。」
直子「ほんで ロンドン?」
聡子「ふん。」
優子「何で ロンドン?」
聡子「うち ロンドン 好きやさかい。」
優子「聡子 分かってるか? ロンドンは 日本語 ちゃうんやで。 人 みんな 英語で しゃべんねんで。」
聡子「ふん そんくらい 分かってる。」
直子「あんた 英語 でけへんやん。」
聡子「でけへんけど… どないかなると思う。」
優子 直子「ならへんわ!」
優子「あんたな そんな甘いもん ちゃうで! あんたみたいな 危なっかしい子ぉが ロンドンなんかで やっていけるかいな!」
直子「せや。 あんたは ここの店の後を継ぎ! その方が うちらも安心や。 そないし!」
優子「そら うちらもな 確かに あんあに甘えて 店の売れ残りの処理 さしとった。 けど もう そんな事はさせへんて。」
直子「もう うちも させへん。 もう 悪かったわ。 あんたの好きな仕事をしい この店で。 なあ!」
優子「な!」
聡子「うちは…。」
直子「絶対 無理やで ロンドンなんか!」
優子「やめときや!」
直子「やめとき。」
糸子「いや 行かしちゃろ。」
優子「はあ?」
直子「あかんて お母ちゃん!」
糸子「行き 聡子。」
直子「いや あかんて!」
優子「無理やて!」
糸子「あんたらは 黙っとき! この子は うちの店の子や。 あんたらが 口出す事 ちゃう! あんたの好きにし。 ロンドン 行き。」