台所
糸子「おばちゃん この匂い 何?」
玉枝「ええやろ? 今日の ごっつおの匂いや。」
糸子「ふ~ん。 変わった匂いやなあ。」
玉枝「う~ん。」
(2人の笑い声)
玉枝「勘助! 糸ちゃん 来たで~。」
居間
玉枝「来たで~ ごっつおが~!」
勘助「やった! もう腹ペコペコや!」
糸子「外国のごちそうて どんなん どんなん?」
玉枝「ほな いくで~!」
糸子「うん。」
玉枝「パッ!」
糸子「わあ~ 何や これ?! ごっつ うまそう!」
勘助「うまそうか? 何や けったいやん 色も匂いも?!」
玉枝「これをな こないして 御飯に かけてな…。 ほい!」
糸子「ああ! 頂きます~!」
勘助「お母ちゃん オラ 御飯だけでええわ。」
玉枝「何 言うてんや! せっかく作ったのに。」
糸子「ん? うまい。 ごっつ~ うまい!」
玉枝「せやろ~!」
糸子「うん!」
玉枝「ほれ。」
糸子「食べてみいって! うまいさかい。 そんな ちょっとやったら 分からへん! もっと ガバッといき!」
玉枝「男やろ?!」
勘助「うま~い!」
糸子「そやろ~? 言うたやろ~!」
玉枝「カレーちゅうねん よう覚えときや!」
糸子「もう カレー 一生忘れへんな。」
勘助「お代わり あるけ?」
玉枝「ああ 兄ちゃんの分もな 残しといたらな あかんさかい 糸ちゃんだけ お代わりさせたろ!」
糸子「やった!」
勘助「何でやねん?!」
小原家
子供部屋
(小鳥のさえずり)
糸子「朝や。」
<いよいよ うちが 枡谷パッチ店で 働ける日ぃが やって来ました>
(鼻歌)
静子「おはようさん…。」
糸子「早う起きや! もう朝やで。」
居間
糸子「おはようさ~ん!」
ハル「あれ えらい早いやんか。」
糸子「そらせや。 うちは もう 女学生と ちゃうやさかい 寝坊なんか してられへんわ! あ お父ちゃん おはようさん!」
善作「お前 働きに行くんやないぞ。 勉強や。」
糸子「分かってまっさ~!」
善作「勉強やで。」
<お父ちゃんは…>
善作「ええか 勉強やで。 勉強やと思うて 行きよ。」
糸子「へえ 分かってます。」
<『勉強やぞ』を 100回くらい繰り返してから やっと うちを送り出してくれました>
善作「勉強やと思うて 行くんやで!」
千代「糸子~!」
善作「お~い 勉強や!」
道中
糸子「手土産 何 買うたん?」
千代「忠岡堂のまんじゅうや。」
糸子「いや~ 奮発したなあ!」
千代「そら お世話になるんやさかい。」
糸子「あ~ うれしいなあ。 職人のおっちゃんら うちの顔 見たら 何て言うんやろ? 絶対 喜んでくれんで。 『糸ちゃん よう帰ってきたなあ!』て。 うち ごっつ かわいがられてん。」
千代「うん。」