田中「こら!」
糸子「え?」
田中「そんな拭き方が あるかい! もっと 縦縦 横横や!」
糸子「縦縦 横横?」
田中「縦 縦 縦 縦 端っこまで行って ほんで 上から 横 横 横 横や。」
糸子「ああ…。」
田中「丁寧にやれ 丁寧に! 返事は?!」
糸子「へえ。 縦 縦 縦 縦 横 横…。」
さよ「お昼 でけましたで~。」
一同「はい!」
坂本「行くで。」
岡村「はい。」
さよ「おとうちゃん お待たせです。」
休憩室
枡谷「食おう食おう。 いっぱい食えよ。」
山口「あんたは 後や。」
糸子「ええ?」
山口「一番下っ端は 残って 留守番や。」
糸子「ええ~!」
山口「みんなが 食べ終わってから あんたの番や。 食べたら みんなの食器 洗うんやで。」
糸子「は~あ~。 おなか すいた~。」
(食事中の談笑)
3人「ごちそうさまでした!」
「よし 行こうか!」
糸子「えっ… こんだけ?」
<お茶の順番とか 縦縦 横横とか 枡谷パッチ店には それまで うちの知らんかった いろんな決まりがありました>
さよ「あんた まだ 食べてんのけ?!」
糸子「え?」
さよ「さっさと食べな 片づけへんやろ?!」
糸子「あっ…。」
<遊びに来んのと 働くんでは 全然ちゃうんやちゅう事が 分かりました そやけど 一番びっくりして 一番悲しかったんは…>
作業場
糸子「それ あと ミシンかけるんやろ? …かけるんですやろ?」
山口「そうや。 触るな! 汚れる。」
糸子「あんたが… やなくて けんちゃんが…。」
山口「山口さんや。」
糸子「山口さんが ミシン かけるん? …ですか?」
山口「アホか。」
糸子「え?」
山口「わしは まだ 見習い2年目や。 ミシンなんか 触らせてもらえる訳ないやろ。」
糸子「どうゆう事?」
山口「『どうゆう事』て 知らんのか? 見習いちゅうんは まず 5年は 掃除と お茶くみや。 それから やっと きれに触らせて もらえるように なんねん。 ミシン かけられるように なるなんか まあ 10年先やな。」
糸子「ええっ?!」
山口「聞こえへんかったか? あと10年や!」
<あと10年?!>