連続テレビ小説「カーネーション」第68回「薄れゆく希望」【第12週】

台所

糸子「この橋を渡ったら 右手に 市場の入り口が 見えるさかい。」

<買い物は ひとまず 隣町の市場に 行かせる事にしました>

2人「ほな行ってきます。」

糸子「行っちょいで! 気ぃ付けてな。」

幸子「はい。」

清子「行ってらっしゃい!」

居間

清子「あんな。」

糸子「ん?」

清子「こんなん言うたら あれやけど 町内会のおばちゃんらと ちゃうやろか。」

糸子「何が?」

清子「うちが闇やってるとか 言いだしたん。」

光子「うちも そう思う。」

糸子「あんたら めったな事 言うもん ちゃうで。 葬式で どんだけ…。」

光子「せやけど おばちゃんら。」

糸子「何や?」

光子「『うちに こんなに ようさん食べ物 あんの おかしい』て言うてた。」

清子「うちも聞いた。『配給所にもらいに 来てんの 見た事ないのに』て。」

糸子「そんなん。 そんなん そら うちは…。 うちは ようさん あるさかい 遠慮して もらいに 行けへんかったんやないか!」

清子「うちに 怒らんといてよ! うちが 言うたんと ちゃうのに。」

千代「な~あ? 粉あるかいなあ! 粉。」

(千代の鼻歌)

台所

千代「フフフ!」

清子「それから おみそ。」

静子「さすが おばあちゃんやなあ。」

千代「やっぱし 昔の人は 偉いなあ。」

光子「すいとんなんか うちら 思いつけへんもんなあ。」

オハラ洋装店

<配給は遠慮して 行けへんかったんも ほんまや。 けど… やっぱし そんだけとちゃう。 意地もあった。 うちの者を あの列に並ばさん事で うちは 自分を特別やと 思おうとしてた。 自分には そんだけの かい性が あるんやて 思いたかったんや>

糸子「アホやな…。」

(足音)

節子「こんにちは。」

糸子「ああ。 おかげさんで ええ葬式でけました。 ほんま おおきに。」

節子「もう 店 開けてんけ?」

糸子「うん。 その方がええか思てな。」

節子「ふ~ん。」

<おばちゃんも うちが 闇やってるて言うたんやろか>

節子「せや あんな。 明日 野菜の配給があるんやて。」

糸子「おおきに。 回しとくわ。」

節子「あんな。」

糸子「え?」

節子「うち 行くさかい 糸ちゃんも一緒にや。 その 糸ちゃんとこは 食べ物 ようさん あるさかい 行かんでええかも しれへんけど あれやで おいしいで 配給のもんかて。 な? 行かへんか?」

糸子「おおきに。 行くわ… 行くわ。 おおきに。 誘てくれて ほんま おおきに。」

節子「うん。」

糸子「おおきにな。」

節子「うん。」

スポンサーリンク







シェアする

フォローする

スポンサーリンク