連続テレビ小説「カーネーション」第72回「薄れゆく希望」【第12週】

居間

糸子「あんたら『検品しました』て どこ見て 言うてんや?! 見てみ これ! あんたら 店の信用 何やと思てんや?! こんな不良品 平気で 納品なんかしてたら 工場に怒られるだけで 済まへんのやで! しまいに 仕事 もらえんように なんやで!」

清子「すいませんでした!」

3人「すいませんでした!」

オハラ洋装店

糸子「はあっ!」

千代「なあ 糸子。」

糸子「ああ?」

千代「八重子さん 朝から 様子が おかしいんや ぼお~っとして…。」

糸子「そら 何か あったんやろ。」

千代「ええっ! せやろか…。 何が あったんやろ…。」

糸子「そら このご時勢に 女が一人で 家 守ってんや。 何なと あるわな。」

千代「あんた ちょっと聞いたったら…。」

糸子「うちかて もう 手いっぱいや。」

千代「ふ~ん ふん…。」

糸子「あんな お母ちゃん。 もう 今はな うちかて 誰かて 相手の荷物 持つ余裕なんか どこにも残ってへんねん。 自分の荷物は 自分で どないか してもらうしか ないんや!」

千代「ふ~ん…。」

糸子「もう…。」

玄関前

光子♬『勤務 月月 火水木 金金』

(からすの鳴き声)

井戸

糸子『こんなん 渡されてみ? つけられへんで。 何を考えとんのや。 これや これや これ。 見てみ。 ボタン ついてない。』

勘助「光っちゃん 久しぶりやな。」

光子「勘助ちゃん。」

糸子『これ 外したらええねん。』

勘助「糸やんも 元気そうやな。」

糸子『ほれほれ 歩いてみ。 おっかしな これ。 えっ? こんなんで 歩かれてみ 兵隊さん どない思うの? これ。』

勘助「光っちゃん…。 糸やんを… よう助けちゃってな。」

光子「糸子姉ちゃんに…。」

勘助「うん?」

光子「会わんと 行くん?」

勘助「会いたいけどな。 俺にはな… 資格が無いんや もう。 せやけど それも… やっと しまいや。」

オハラ洋装店

昌子「お帰り。」

縫い子達「お帰り。」

糸子「何や? また 工場で 怒られたんか? ほな 何や?」

(泣き声)

糸子「うん? 何や? 泣いてたら 分からへんやろ。 言うてみ。」

光子「ううん。」

糸子「ええっ?」

(泣き声)

八重子「光っちゃん… 勘助ちゃんに 会うたんけ?」

糸子「えっ?」

光子「うん…。」

糸子「勘助と? 何で?」

八重子「今日… 出征やったんや 勘助ちゃん。」

糸子「出征…? 勘助 来たんか? あんた しゃべったんか?」

光子「うん… 勘助ちゃん 遺言みたいな事ばっかし 言うちゃった…。」

(光子の泣き声)

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