泉川高等女学校
<うちも いっちょまえの 女学生になりました。>
教室
<女学校は 当たり前やけど 女子ばっかしで 別嬪もおれば そうでないのも おります>
「痩せたいわ~。」
「うちも。」
「うちは 色 白になりたい。」
「ほんで 宝塚に入りたい!」
「うちは 痩せたら 坂東妻三郎様に 会いに行くわ!」
「はあ~ どないしたら 痩せんやろうなあ?」
3人「う~ん…。」
「何? 吉田さん。」
奈津「何にも。」
<吉田奈津は 女学校に 友達がいてへんみたいです そやけど うちも 人の事は 言えません>
「あれ? お芋 どこいった?」
「えっ? ん?」
<うちは 今 三角に夢中です>
「ちょっと 小原さん うちのお芋 取らんといてよ!」
教師「大事なんは 一目一目…。」
<裁縫の授業は 週に4回あります>
教師「決して 雑にやったら あきませんよ。」
<当然 うちは いっつも 大張り切りなんやけど>
糸子「はい! 先生。」
教師「はい 小原さん。」
糸子「あの アッパッパの事なんですけど…。」
教師「小原さん。 今 みんなが縫っているのは 何ですか?」
糸子「浴衣です。」
教師「そう 浴衣です。 今 アッパッパは 関係ありませんね?」
糸子「そやけど 浴衣は もう縫うてしもたんです。 あの… アッパッパの裾に こんな三角 入れたい 思てるんですけど…。」
教師「三角でも四角でも おうちで 好きなだけ入れたら よろしい! 縫い終わったら 静かに 教科書でも読んでなさい!」
<好きすぎる ちゅうもんも 具合の悪いもんで 教科書なんか 4月にもろてから もう100回は読んでるし 書いてある事 全部覚えてるしで 裁縫の授業は 眠たあて しゃあありません>
教師「小原さん!」
教師「皆さん 今日も一日 つつがなく過ごす事ができて よかったですね。 日に日に 暮れるのが 遅くなっていますが…。」
<小学校と違て 女学校は 終わんのも遅いし 宿題も ようさん出て なかなか 裁縫の時間がありません>
教師「宿題も 忘れんよに。 よろしいですね。」
一同「はい!」
「起立! さようなら!」
一同「さようなら!」
道中
<うちは いっつも 走って 家に帰ります>
糸子「あ! 勘助やんか。」
「勘助やんか。」
「誰じゃい あいつ?」
<何や知らん このごろ 勘助は 道で会うても 返事せえへんよに なりました>
小原家
子供部屋
糸子「はあ~ でけた! 光子 ちょっと 着てみ。」