千代「え~ ちょっと ちょっと! 待っちゃあって そやけど 見てえな これ! 直子が縫うた バッグ よう でけてるで。」
糸子「これ え? 直子が縫うたん?!」
千代「ほんでな こっちは 優子が縫うた お人形の服や。 ほら なあ!」
糸子「これ 優子が?」
千代「なあ~!」
糸子「へえ~! いやいや あかん!」
千代「え?」
糸子「チビの遊びに 大事な店の表 貸す訳にいくかいな!」
千代「ああ~ え~!」
糸子「はい はい。 はい。 どないかしといて。」
千代「あれ~。 え~! あ~!」
優子「絶対うちのが 売れてるで!」
直子「うちのんかて 売れてる!」
優子「うちのや!」
直子「うちのや!」
優子「うち!」
直子「あ!」
居間
優子「ほんま? おばあちゃん 売れたん?」
直子「全部?」
千代「ふん。『はあ~ このお人形の服 かいらしわ~ うちの子に買うてったろ』『は~ このバッグ しゃれてるわ~ しかも安いわ』て あっちゅう間に 売り切れてなあ。」
優子「ほんま?」
直子「ほんま?!」
千代「これが 証拠や。」
2人「ほんまや~!」
千代「聡ちゃんのこさえた福笑いと 紙相撲も売れたんやで。 ハハハ!」
優子「ふわ~ これやったら ほんまに ピアノ帰るかもしれへん! 頑張ろう!」
直子「うちも頑張ろう!」
聡子「うちも頑張る!」
千代「せや 頑張り 頑張り! さあ お芋さん お食べ。 おいしいなあ!」
2階 寝室
糸子「あんたら まだ寝てへんけ? お母ちゃん 何ちゅうた? 明日も学校なんやさかいに さっさと布団敷いて 寝りちゅうたやろ! 聞いてんのか?」
優子「もう あとちょっと…。」
糸子「あかん! もうやめ ほれ! 目ぇ悪なんで! あんたら誰に似たんやろ? お母ちゃんはな はよ寝ぇ 言われたら しゃっと布団敷いて さっと寝たもんやで! あ~ 邪魔や これ 何や これ? うん…。」
優子「あ…。」
糸子「小学生はな 早寝早起き でけるちゅうんが 何より大事な事なんや。 早寝がでけへんかったら そら 早起きもでけへんちゅうのに。 聞いてんのか? 何?」
聡子「何や嘘や。」
糸子「あ?」
聡子「おばあちゃん 嘘ついた~。」
糸子「何がや? 何や?」