玄関前
算太「え~ では 皆さん。 不肖 橘 算太 お国のために…。 踊って… もとい 戦うてまいります!」
吉兵衛「橘 算太君の 武運長久を祈って 万歳!」
一同「万歳!」
吉兵衛「万歳!」
一同「万歳!」
吉兵衛「万歳!」
一同「万歳!」
吉兵衛「万歳!」
一同「万歳!」
吉兵衛「万歳!」
一同「万歳!」
吉兵衛「万歳!」
一同「万歳!」
吉兵衛「万歳!」
一同「万歳!」
吉兵衛「万歳!」
工場
一同「万歳!」
吉兵衛「万歳!」
一同「万歳!」
吉兵衛「万歳!」
一同「万歳!」
<その後 間もなく…>
居間
丹原「お世話になりました!」
杵太郎「丹原 ご苦労さんじゃったなあ。」
ひさ「戦争が終わったら 戻ってこられえよ。」
小しず「どうか ご無事で。」
丹原「はい。」
<残っていた職人たちも 次々に召集され たちばなを去りました>
玄関前
黒鉄「申し訳ありません 大将。 自分だけは 最後まで 店の力になりたかったんですが…。」
金太「黒。 長え間 ようやってくれた。 ありがとう。 持ってけ。」
<人手もなく 材料も乏しく たちばなの商いは 次第に縮小していきました>
工場
安子「お父さん。 私にできることねえ?」
金太「安子。 すまんかったな。」
安子「えっ?」
金太「こねんことになるんじゃったら あの時 おめえと雉真さんの坊ちゃんのこと 認めてやりゃあ よかった。 そしたら おめえに苦労かけることも…。」
安子「やめて。 こうなることに決まっとったんじゃ。 最初から…。」
<一方 雉真繊維は 工場を拡張 さまざまな衣料品を 軍に納入するようになりました>
雉真家
玄関
勇「ただいま。」
美都里「あら 勇 早かったんじゃな。」
勇「おう。」
美都里「お帰り。」
勇「わしみてえに 野球しに大学入ったもんは 今や 肩身が狭んじゃ。 はあ~ 寮に残っとっても しょうがねえじゃろ。」
座敷
神田「いや さすがは雉真さん。 すばらしい先見の明ですな。」
千吉「とんでもない。 神田中佐のご尽力がなかったら あれだけの規模で納入させてはいただけなかったでしょう。」
神田「いつか お目にかかったご長男は まだ大阪ですか?」
千吉「ええ。 この正月にゃあ帰省して 工場を見るように言うたんですが 何かと口実をつけて 帰ろうとせんのんです。」
神田「聞けば 大東亜銀行の頭取の お嬢さんとの縁談が進んでいるとか。」
千吉「その前提で 頭取は融資をしてくださっとります。」
神田「しかし 正式には せがれの卒業を待ってということに…。」
勇「それ どういうこと!? 兄さんの縁談て 本当なん?」
千吉「勇 お客様が来られとるんじゃで。 ご無礼をいたしました。」
神田「いやいや。」
千吉「次男の勇です。」