寝室
杵太郎「ハハハハハッ。」
ひさ「ここ?」
杵太郎「あ~ いやいや。 あ~ うっ。」
ひさ「ここ?」
杵太郎「う~。 あ~。」
ひさ「痛い 痛い…。」
杵太郎「大丈夫…。」
安子「おじいちゃん?」
小しず「お義父さん 大丈夫ですか?」
杵太郎「お~。 ハハッ。 うっ…。 ああ。 大したこたあねえ。 ハッハッハッハッ。」
ひさ「それがのう やめとけ言うのに 金太と一緒になって畑仕事して もともと痛めとった腰ゅう 余計に悪うしてもうたんじゃ。」
杵太郎「面目ねえ。 ヘッヘッヘッ。」
安子「おばあちゃん 今日 おじいちゃんにお汁粉作ったげて。」
2人「えっ?」
杵太郎「お~! ハッ 何よりの薬じゃ! (笑い声)」
<戦争は 庶民の当たり前の生活を さまざまな形でゆがめ むしばんでいきました。 世の中から外国語が消え 大学野球でも その影響は色濃くなりました>
野球大会
主審「正球!」
主審「悪球。」
主審「打者 引け!」
<夏には 少年たちの憧れだった 甲子園球場までもが解体されました。 金属を回収し 武器を製造するためでした>
喫茶店・出っ歯口の憂鬱(ディッパーマウス・ブルース)
<ジャズなど 米英の楽曲は 演奏を禁止され 個人所有のレコードまでもが 供出させられました>
配給
「ご苦労さまです。」
<そして 秋のことでした>
「次の方。」
道中
清子「あっ 安子ちゃんもお願い。」
安子「千人針ですか? もちろんです。」
ラジオ『ニュースを申し上げます。 東條首相自らによる放送で 発表されましたとおり 国内必勝体制強化のため 政府は 学徒をして 直接戦争遂行に 参与せしむることに方針を決定。 これにより 全国の大学 高等学校 高等専門学校在学中の 大正12年11月末生まれ以上の 理工 医系以外の学生の徴兵猶予は 停止せられることとなりました』。
<それは 稔が出征することを 意味していました>