雉真家
玄関
安子「Hang a bell around her neck. If… If…. If she walks, the bell will ring. If it rings, we can run….」
(足音)
安子「勇ちゃん…。」
勇「ただいま。 義姉さん。 あ~ るい。 大きゅうなったのう。 フフフフ…。」
安子「早う… 早う 入って! お義父様! お義母様! 勇ちゃんです! 勇ちゃんが帰ってきました!」
千吉「勇!」
美都里「勇!」
勇「父さん。 母さん ただいま帰りました。」
ダイニング
美都里「悪いなあ。 もっと ごっつぉお 食べさせてやりてえけど 配給じゃあ これが精いっぱいなんじゃ。」
勇「いや 立派なごっつぉおじゃ。 頂きます。 うん! うん うめえ。 やっぱり家はええのう。」
千吉「どけえ配属されとったんなら。」
勇「小笠原じゃ。 穴掘りばあ させらりょおった。 焼夷弾より 暑さにやられて 死ぬんじゃねえかと思よったとけえ 終戦の知らせが来たん
じゃ。」
美都里「そりゃあ よかったわ。」
勇「よかあねえ! 戦場に ええことなんか 一つもねえ! あ… ごめん 母さん。」
千吉「もう 何も話さんでええ。 皆 おめえが帰ってきたことを喜んどる それだけじゃ。」
勇「うん。 早う兄さんも帰ってくりゃあええのう。」
離れ
勇「ご愁傷さまでした。 大変じゃったなあ。 兄さんから便りは?」
安子「まだ…。」
勇「ああ…。 きっと 終戦の頃に 船で遠いとけえ行ったんじゃろう。 じゃから 復員が遅れとるだけじゃ。」
安子「うん。 フフッ 勇ちゃんが言うたら説得力あるわ。」
勇「おう。」
安子「ありがとう。」
勇「ああ。 あ~。」
安子「フフフフフッ。」
勇「ほい。 お~。」
安子「上手じゃなあ るい。」
勇「ほい。 この子あ 筋がええ。 さすがは るいっちゅう名前じゃ。 ほい。 フッ ハハハハッ。 もういっぺん。 おっ。」
安子「フフフッ。」