安子「な… 何が?」
算太「いや まさか 安子が この雉真繊維の嫁さんに おさまっとるたあ 夢にも思わなんだ。」
安子「は…?」
算太「ははあ… ええ? おめえ 意外と わしより策士じゃのう。 ヘヘヘヘッ。」
安子「お兄ちゃん。 失礼な言い方せられな!」
算太「ほれ 安子!」
安子「すんません。」
千吉「いやいや。」
算太「おう おう。 そうじゃ 雪衣さん いうた?」
雪衣「はい…。」
算太「どねんなら? 女中やこやめて わしの嫁さんならんか? いやいや わしゃあ もう雉真家の親戚じゃあ。 あんたも その仲間入りができるっちゅうことじゃ。 一生 安泰じゃが。 ヘヘ… 何じゃあ おお つれねえのう 雪衣ちゃん。」
安子「お兄ちゃん!」
算太「おい どこ行く…。」
安子「お兄ちゃん やめて!」
算太「何じゃあ。」
安子「お父さんとお母さんが どねえに お兄ちゃんのこと心配して 帰りを待ちょったと思よんでえ? お父さんやこ 亡うなる間際まで…。」
算太「死んだ親父が 何ゅう思よろうが知ったことじゃねえ。」
安子「お兄ちゃん!」
算太「ハッ。 あ~ もうええ 安子。 ヘヘヘッ。 あ~ 酒が まずうなる。」
勇「母さん…。」
算太「すんません。」
美都里「恋しいんじゃろう? お父さんと お母さんに 会いとうて たまらんのじゃろう?」
回想
算太「あ… 腹減った…。 目が回る…。 もう進めん…。 あっ… お… おはぎじゃ…。」
算太「ハッ… ハッ… ハッ… ハッ… ああ…。 父ちゃん…。 母ちゃん…。 どうやら わしゃあ ここまでのようじゃ…。」
算太「母ちゃん…。」
小しず「算太。 久しぶりじゃね。 元気しょおった?」
算太「元気かどうか 見りゃ分かろうが。」
小しず「もう戦争は終わっとるんよ。」
算太「えっ?」
小しず「この先に港があるから そこで船に乗られえ。」
算太「ええ?」
小しず「フフフ… 本当に あんたは 賢えようで抜けとるんじゃから。」
回想終了