廊下
(戸が開く音)
稔の部屋
安子「そしたら お兄ちゃん。 よろしゅうお願いします。」
算太「うん。」
るい「行ってらっしゃい。 算太伯父さん。」
安子「るい。」
るい「何? お母さん。」
安子「信用金庫からお金を借りる話が まとまって 新しい家とお店が手に入ったら… お母さん 算太伯父さんと一緒に その家に住もうと思う。」
るい「おはぎのお店に?」
安子「そうじゃ。」
るい「楽しそう!」
安子「るいは このまま この家に住むんじゃ。」
るい「えっ…。」
安子「けど 会えんようになるわけじゃねえ。 お母さん 毎日 会いに来る。 るいのお弁当だって 毎日作って持ってくる。」
るい「嫌じゃ! 何で そねんことを言ん? ずっと一緒におれるって言よおったが? 何があっても お母さんは るいを離さん 言うて。」
安子「るい。 これは るいのためなんじゃ。 るいが幸せになるために 必要なことなんじゃ。」
回想
千吉「実は こねえだ 大阪の医者に るいを診てもろうた。」
安子「えっ。」
千吉「途方もねえ金がかかることじゃ。 雉真繊維の力がなかったら 治してやれん。 雉真の子として 生きていく。 それが るいにとっては一番えんじゃ。」
回想終了
るい「嫌じゃ…。」
(泣き声)
安子「るい。 もうすぐ入学式じゃなあ。 お母さん 楽しみにしとる。 るいの晴れ姿。」
(泣き声)
町中
回想
算太「雪衣ちゃん 店を始める家が手に入ったら 一緒に暮らしてくれんか?」
回想終了
算太「ハハッ。 ハッハッハッハッ ハハハッ。 ハッハッハッハッハッ! ハッハッハッハッ…。 ハッハッハッハッ…。 ハハハハ…。」