竹村家
竹村クリーニング店
和子「今頃 楽しんでるやろか るいちゃん。」
平助「うん…。」
和子「そわそわして かいらしかったわあ。 初めてのデートなんやろねえ。」
平助「どないな毎日やったんやろなあ 岡山で。 ハンカチにアイロンあてたったぐらいで あないに うれしそうに…。 そやけど 申し訳なさそうに笑て…。 よっぽど 甘えることに慣れてへんのやろ。 わしは あの子の笑た顔が 悲しそうにしか見えへんのや。 あの小さい 細い体で どんだけのもん 抱えてんねやろ思て…。」
和子「デート… 楽しんでるといいね。」
平助「うん。」
ジャズ喫茶・Night and Day
(拍手)
ベリー「ジョー! ジョー!」
(拍手)
木暮「ご苦労さん。 ご苦労さん。 ご苦労さん。 ジョー よかったで。」
「よかったぜ ジョー。」
「ご苦労さん ジョー。」
るい「(心の声)『ジョー?』」
(拍手)
トミー「ジョー。 お前のトランペットは いつ聴いても… 仕入れが極端な すし屋みたいやな。 アジだけで勝負。」
(笑い声)
ベリー「ジェラシーで言うてんねやろ トミー。」
るい「(心の声)『トミー?』」
トミー「黙っとけ ベリー。」
るい「(心の声)『ベリー!? 何 ここ。 何 この人ら…。 ちいてけん。』」
ジョー「やっぱり ジャズが好きなんや。」
るい「えっ? やっぱりって…?」
ジョー「ルイちゃんって呼ばれてたから。」
回想
和子「るいちゃん。 後で こっち お願い。」
るい「あっ はい。」
回想終了
るい「違います。 別に ジャズが好きなわけじゃ…。」
(指で机をたたく音)
るい「(心の声)『またじゃ。 何ゅう いらだっとんじゃろう? 一方的に質問してきといて 返事が待てんいうこと?』
ジョー「ありがとう。 食べながら話していい?」
るい「あっ どうぞ… えっ?(心の声)『いや 何で そもそも ここに座っとるん? 何で話さなきゃいけんの?』
ジョー「サッチモのルイと ちゃうの?」
るい「サッチモ…?」
るい「(心の声)『何じゃあ サッチモて。 いや その前に 何じゃあ この人。 全然 会話が成り立たん。』はあ…!(心の声)『これえ! これじゃったんか! いっつも シャツのおんなじとこに ちいとるケチャップ。 ああ… ほっといたら染みになるのに…。 洗いてえ… 今すぐ洗いてえ。 よかったら また洗います。』」