連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」第72話「1976-1983」【第15週】

居間

『おしん!』。

『あっ 危ない。 座ってろ』。

『母ちゃん! 母ちゃん! 母ちゃん! 母ちゃん! 母ちゃん! 母ちゃん! 母ちゃん!』

『父ちゃん…』。

『父ちゃ~ん!』

『あっ 危ね』。

『父ちゃ~ん!』。

錠一郎「え~… おしん まだ7つやのに…。」

ひなた「桃太郎と同い年?」

錠一郎「そう そう そう そう そう。」

ひなた「学校にも行かんと 働くん?」

錠一郎「るい。 うちは なんぼ貧しくても 桃太郎を奉公に出さんとこな。」

ひなた「なんぼ何でも ここまで貧しいことあらへんわ。」

<『おしん』ほどではありませんが 大月家の暮らしが決して楽ではないことを ひなたは子供の頃から感じていました>

高校

ひなた「やっぱり就職かな…。」

一恵「えっ ひなちゃん 進学しいひんの?」

ひなた「うん。」

小夜子「大学も短大も 専門学校も?」

ひなた「うん。 ああ 経済的に 無理やと思う。 お父ちゃんも お母ちゃんも 桃には大学行かしてやりたいやろし…。」

一恵「そうか。」

ひなた『お父ちゃ~ん! お母ちゃ~ん! お父ちゃ~ん! お母ちゃ~ん!』。

錠一郎『ひなた~! すまねえ ひなた!』。

るい『ひなた~!』。

(泣き声)

ひなた『お母ちゃ~ん!』。

小夜子「ひなちゃん。 大丈夫?」

ひなた「うん? うん。」

一恵「けど 就職て どこに?」

ひなた「さあ… それですわ。 全然 想像できひん。 自分が どっか就職して働くやなんて。」

一恵「分かる。」

ひなた「できることやったら ずっと このままでいてたい。」

小夜子「このままって?」

ひなた「私は 高校生で 桃は小学生。 お父ちゃんとお母ちゃんと あの家で暮らしたい。」

小夜子「気持ちは分かるけど…。」

一恵「そんなん『サザエさん』の世界にしか あらへんえ。」

ひなた「分かってる…。」

小夜子「それやったら ひなちゃん 家のお仕事 手伝ったらええんと違う?」

ひなた「えっ。」

小夜子「回転焼き。」

回想

「もしかして 焼いたことないの? ハッ。 ハッ うそだろ。」

回想終了

ひなた「あ~! 無理!」

一恵「何? さっきから。」

ひなた「ごめん…。」

小夜子「いいと思うけどなあ。 回転焼き屋さん。」

一恵「うん。 おばちゃん 助かると思うえ。」

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