榊原「どないしたん?」
ひなた「えっ? あっ… いや あの… はあ… 感激してしもて…。」
榊原「そんなに好きなん? 時代劇。」
ひなた「はい!」
榊原「そうか。」
ひなた「あっ… うん? 榊原さん。」
榊原「うん?」
ひなた「あの人…。 コンテストの時の。」
榊原「ああ うん。 五十嵐君。」
ひなた「あの人も大部屋の俳優さんですよね?」
榊原「そや。」
ひなた「ここにいてるのに 何で斬られへんのですか?」
榊原「いやいや。 まだ そこまでは。」
ひなた「えっ?」
榊原「確か 五十嵐君は 養成所出たばっかりのはずや。 斬られ役も鍛錬がいるからな。 そう簡単には。」
ひなた「ほな…。」
榊原「今はまだ ああやって 先輩の斬られる姿見て 勉強してるんや。」
回想
五十嵐「アラカンの五十倍だ。 俺は超える。 アラカンも モモケンも。」
回想終了
ひなた「(心の声)『何や 偉そうなこと言うて 大部屋の中でも下っ端なんやん。』」
大月家
玄関
ひなた「行ってきま~す。」
<ひなたが条映に通うようになって 1週間が過ぎました>
俳優会館
休憩所
ひなた「おっ すんません。」
「ああ ごめんなさいね。」
「ごめんなさいね。」
「ひなたちゃん。」
ひなた「はい。」
「こっち お茶もろてええ?」
ひなた「あっ はい。」
「こっちもな。」
ひなた「ただいま!」
<ひなたは次第に 休憩所に出入りする人たちに 認識されるようになってきました>
ひなた「どうぞ。」
「ああ おおきに。」
ひなた「お待ち遠さんです。」
「ありがとさん。」
すみれ「あっ 皆さん お久しぶり。」
「誰か思たら すみれちゃんやないか。」
「久しぶりやな。」
回想
『黍様…』。
回想終了
ひなた「あ… おゆみちゃんや…!」
<それは ひなたが愛してやまない 『黍之丞』シリーズに かつてレギュラー出演していた女優の 美咲すみれでした>
「7~8年になるんちゃう?」
すみれ「さあ… もう忘れちゃったわ。 東京行ってから あんまり慌ただしくて。」
「アハハハッ そうか。」
「今日は出番か?」
すみれ「ううん。 まずは打ち合わせ。」
「ふ~ん。 頑張ってな。」
すみれ「ありがとう。」
ひなた「あの… 美咲すみれさん。」
「アルバイトのひなたちゃんや。」
ひなた「あ…。 あの サインもろてもいいですか?」
すみれ「いいわよ。」
ひなた「あ… あっ ありがとうございます! あの… あっ 色紙買うてきます!」