ひなた「えっ?」
すみれ「お茶いれて。」
ひなた「はい。」
すみれ「あなた アルバイト?」
ひなた「はい。 大月ひなたです。 高3です。」
すみれ「変わってるのね。」
ひなた「えっ?」
すみれ「そんな若い子が『黍之丞』見てるなんて。 せりふまで覚えるほど。」
回想
ひなた「『黍様。 ご無事でよかった』。」
五十嵐「『おゆみ』。」
ひなた「『ゆみは 三国一の幸せ者でございます』。」
五十嵐「『おゆみ』。」
回想終了
ひなた「あの回は 特別です。 印象に残ってるんです。 おゆみちゃんが潔くて。 侍みたいで。」
すみれ「侍?」
ひなた「はい!」
すみれ「フッ… フフッ… 本当に 変わった子ね。」
ひなた「すいません。 あっ どうぞ。」
すみれ「ありがとう。」
ひなた「いえ。」
すみれ「私は忘れてた。 あのシーンのこと。 ううん。 あのシーンだけじゃなくて… おゆみを演じてたことなんか忘れてた。」
すみれ「忘れたかった。 あのころの自分を。 あのころは 今より更に若くて。 かわいくて 可憐で。 ハツラツとして ピチピチしてて。 それだけで価値があった。 それだけじゃ駄目なんだなって 気が付いたのは 『黍之丞』シリーズ 降板してからよ。 潔くて 侍みたいで… か。」
(何かを書く音)
すみれ「はい。」
ひなた「えっ? えっ… あの…。」
榊原「お疲れさまでした。」
すみれ「お疲れさま。 じゃあ ステージの話は また。」
榊原「はい。 よろしくお願いします。」
ひなた「すみれさんのサインや!」
榊原「へえ~。 よかったな 大月さん。」
ひなた「けど 何で大事な台本に…。」
榊原「潔く 侍みたいに やめたんと違うかな。 テレビに しがみつくのは。」
廊下
すみれ「フン!」
第一スタジオ
「て~や! とう!」
「とう! ぐあっ!」
「てやっ!」
「くう…。」
「やあ~!」
「があっ!」
「くわあ…。」
「世を治めんがため 天荒を破る。 人呼んで…。 破天荒将軍。」
轟「カ~ット! オッケー! 以上!」
(カチンコの音)
畑野「本日の撮影 以上です! お疲れっした!」
一同「お疲れさまでした!」
畑野「撤収!」