川端「『店員の豆知識がうるさい』。 『聞いてもないのに 映画を語ってきて不快』。 『本当の怖かったぁ~』。 『論破された』。 『もう二度と行かない』。」
ミワ「申し訳ありません…。」
川端「ふだんは真面目だし 映画に詳しいのは結構なことだけど 論破しちゃダメだよね。」
ミワ「…はい。」
川端「辞めてもらえますか。」
ミワ「田淵さん 樋口さん 今日まで ありがとうございました。」
樋口 田淵「お疲れさまで~す。」
田淵「ふだん自己主張しないくせにさ 映画になると周りが見えなくなるとかね。」
樋口「本当 オタクの典型ですよね。 てか 29で サブカルこじらせてんのは イタいですよね。」
<こうして私は 5年勤めたレンタルショップを クビになった>
ミワ宅
<アラサー 独身 キャリアなし。 これが生きづらくないといえば ウソになる>
<だけど…>
<私には映画がある>
<映画を見ている間だけは 現実世界から逃避できる。 そして この画面の中には 私が幼少期から追いかけ続ける 掛けがえのない 激推し俳優がいる>
<八海 崇。 齢56にして 日本 いや! 世界を牽引する国際的名俳優>
<私は 八海 崇が 好きだ。 演技力はもちろん 顔 声 プライベート 全てにおいて 愛している>
『周りは敵兵に囲まれています!』
<その彼の 圧倒的なエネルギーが…>
『中隊本部に連絡しろ!』
『ダメです! もう使えません!』
<私の詰んだ人生に 生きる希望を与えてくれる>
『中尉殿! もはや この島は。』
八海『でも やるんだよ。』
ミワ「はあ… はい 分かりました!」
<映画鑑賞のあとは DVDの整理に フィギュアの手入れ>
<そして 寝る前に情報収集。 八海サマ出演作品の撮影秘話 独占インタビューを 隅々まで読み込んでいく>