さくら「奇跡じゃん! そこまで八海サマに近づけるなんて 久保田さん あんたすごいよ!」
ミワ「でも 毎日いっぱいいっぱいで…。」
さくら「で で 八海サマは久保田さんのこと どう思ってるの?」
ミワ「どうって そんな ただの家政婦としか…。」
さくら「え え じゃあ 久保田さんからアプローチするとしたら どうするの?」
ミワ「へっ!?」
<この人は… 何を言ってる?>
さくら「いいじゃん 言うだけ言ってみてよ。」
ミワ「え… 私が八海サマにですか?」
さくら「そうだよ。」
ミワ「ええっ そんな…。」
さくら「どうやって気持ちを伝える?」
ミワ「ク…。」
さくら「ク?」
ミワ「クッキー焼いて渡すとか…。」
さくら「ヒャア~! クッキーって! 小学生じゃないんだから!」
ミワ「なしです。 今のは なし!」
さくら「いいじゃん! 八海サマって 案外 甘い物 好きなんだよね?」
ミワ「いいです! 大体 アプローチなんかしませんから!」
さくら「…ごめん。」
ミワ「いや こちらこそ なりすましの分際で すいません。」
さくら「いろいろ話してくれて ありがと。 こらからも何があったか 聞いていい?」
ミワ「はい… でも あの…。」
さくら「もちろん なりすましは よくないと思うし 私もあなたに会うまでは 訴えようかと思ってたけど でも 何か今は… あなたを応援したくなった。」
ミワ「え…。」
さくら「また ゆっくり聞かせて。」
<オタクの間では 推しにハマっていくことを 『沼落ち』という>
<今の私はまさに 沼に落ちているような感覚だった>
<私は これまで一人で抱えていて なりすましの罪を 被害者に告白できたという 安ど感に包まれていた。 もちろん 私の罪が 根本的に解決したわけではない。 しかし 清らかな泉ではないが 居心地のいい沼に すっかり身を委ねているような 気分では あった>
(チャイム)
ミワ「は~い。」
さくら「おはよう。」
<ただ それは 決して抜け出せない 底なし沼だった>
さくら「材料 買ってきたよ。」
ミワ「へ?」
さくら「クッキー 一緒に焼こ。」