なつ「上野で浮浪児をしてた時に 一緒にいた信さんが ある日 また会いに来てくれて それで 行方不明だったお兄ちゃんにも 会えたし もうダメかと思った妹も ありえないような幸運で 今は どこかで幸せに暮らしてるって 信じていられるし…。」
なつ「自分のわがままで 北海道出て 好きなアニメーターにもなれて ありえないような楽しいことが いっぱいあって だから… これ以上の幸せはないなって 思ってたから…。 やっぱり これ以上は ありえなくても 文句は言えないけど 私は…。 私は あなたの才能を 好きになったわけじゃありません!」
なつ「あなたの言葉を… 生きる力を好きになったんです。 あなたを好きになったの ありえないくらい…。 だけど あなたは違った…。 好きじゃないことを 才能のせいにしないで下さい。 そんな人とは 一緒にいたくない…。 さようなら。」
おでん屋・風車
1階店舗
亜矢美「お帰り。」
なつ「ただいま。」
亜矢美「どうした? 具合でも悪い?」
なつ「大丈夫です。」
2階なつの部屋
東洋動画スタジオ
中庭
下山「あ… イッキュウさん 来てたのか。」
仲「驚いたよ。 昨日 退職願を出したんだって?」
坂場「はい。」
仲「君が 一人で 責任を負うことじゃないよ これは。」
下山「そうだよ。 君が辞めるんだったら 作画監督の僕も辞めなくちゃならない。 僕のためにも 取り消してくれないか?」
仲「一緒に行こう。」
坂場「いいんです。 それより 奥原さんは?」
下山「なっちゃん? なっちゃん 今日 まだ来てないみたい。」
仲「みんな 君のやりたいことに ついていったんだ。 なっちゃんだって 僕だって…。 完成した映画も満足してるよ。 あんな漫画映画 見たことがない。 そういうものが 日本で作れたんだ。 世界にだった あんな漫画映画 まだないよ。」
坂場「そんなことは どうだっていいんです!」
下山「なげやりになるなよ。」
坂場「それよりも大事な… もっと大事なものを 僕は失ったんです…。」
下山「えっ?」
仲「坂場君…。」