正治「それじゃあ これで。」
タミ「さようなら。 失礼します。」
なつ「さようなら。」
天陽「今度 うちに 遊びに来いよ。」
なつ「えっ?」
天陽「うちに 絵の具があるんだ。 絵を描かしてやるよ。」
なつ「本当に? いいの? 行っても。」
天陽「いいよ。」
正治「天陽 あんな家に 柴田さんのお嬢さんを 招くなんて 失礼だぞ。」
なつ「ダメですか?」
富士子「あの~ もしよかったら 是非。」
正治「あっ… そりゃ もちろん うちは構いませんんが。」
タミ「はい… いつでも どうぞ。」
道中
<それから ある日のこと。 学校帰りに なつは 天陽君と一緒に その家に向かいました。>
<天陽君の家は 本当に小さな家でした。>
山田家
玄関前
天陽「こっちは 馬小屋なんだ。 行こう。」
なつ「うん。」
馬小屋
なつ「わあ~ すごい! これ 天陽君が描いたの!?」
天陽「違うよ。 それは 兄ちゃんが描いたんだ。」
なつ「お兄さんが?」
天陽「うん。 中学で 美術部に入ってるんだ。 兄ちゃんの絵 すごいだろ。 父さんも 兄ちゃんのために 無理して 絵の具を買ってるんだ。 僕の絵は こっちだよ。 ここで 死んだ馬を描いたんだ。」
なつ「だから黒いの?」
天陽「そういうわけじゃないよ。 黒い絵の具は 赤や黄色よりも安いんだって。 それに あんまり 兄ちゃん使わないから。 何か描く? ここにあるやつ どれ使ってもいいって 兄ちゃんに言われてるんだ。」
なつ「あっ… いいよ。」
天陽「せっかく来たのに。 遠慮するなよ。 絵 描きたいんだろ?」
なつ「また 今度。 今日は 天陽君の絵を 見られただけで満足。」
天陽「そっか。」