連続テレビ小説「なつぞら」第131話「なつよ、優しいわが子よ」【第22週】

なつ「また裏切って戦うんですか?」

佐藤「そう。 君にぴったりだろ!」

なつ「いや…。」

山川「やってくれるよね? やってくれた 昇級も約束しよう。」

休憩室

なつ「参ったな…。」

桃代「そりゃ あれだけ 『キックジャガー』を成功させたんだから 会社は もう一回やれって言うでしょ。」

なつ「いや それは うれしいんだけど…。」

桃代「作画監督は もうやりたくないの?」

なつ「やりたくないわけじゃないけど なるべく 6時に 保育園に迎えに行けるようにしたいから。」

桃代「ああ…。」

なつ「それにね こういう暴力的なものは 描くのは もうやめたいんだけど。」

桃代「会社の都合を聞いてたら やめられないわよ。 私の場合は その逆だけど。」

なつ「ん? あっ そうだ 今日は モモッチから 話があるって言ってたよね 何?」

桃代「うん… 実はさ 私 辞めるのよ。」

なつ「えっ?」

桃代「東洋動画を辞める。」

なつ「ええっ… どうして?」

桃代「私は この何年か ずっと トレースの仕事をしてきたでしょ。 トレースの仕事に やっと自身がついてきたところなのに トレースの仕事自体が減っていくんだもん。」

なつ「ああ…。」

桃代「機械が手早くやってくれちゃうからね。」

<仕上げの仕事には 作画をセルに書き写すトレースと そのセル画に色を塗る彩色があります。 このころから トレースマシンという機会を使って 作画の線を簡単に セルに写せるようになりました。 トレースの仕事を合理化するため 東洋動画は いち早く それを取り入れたのです。>

桃代「要するに 私は もう用済みなのよ 東洋動画にとって。」

なつ「いや そんなことないでしょ。」

桃代「まあ 私にとっても もう用済みなのかな この会社は。」

なつ「えっ? 辞めて どうするの?」

桃代「うん… この間 それで マコさんに相談しに行ったのよ。」

なつ「マコさんに?」

回想

麻子「モモッチ 色に興味ある?」

桃代「色? 彩色のことですか?」

麻子「色を塗ることじゃなくて こういう色を決めること。 私は 色指定の仕事も 仕上がやってもいいと思ってるの。」

桃代「えっ? 色指定を?」

麻子「東洋動画では 全部 色は美術が決めてるでしょ。 まあ 背景は そうするしかないとしても 動画の色は 仕上がやってもいいと思ってる。 モモッチなら そういうことに 興味があると思って。」

桃代「あります!」

回想終了

桃代「その言葉が決めてだった。」

なつ「色指定がやりたかったの?」

桃代「だって 今まで 色を塗りながら このキャラクターの服の色は 違う色の方がいいのにな なんて思ってたんだもん。」

なつ「なるほどね… モモッチには そういう才能があるかもしれない。」

桃代「才能というより 好きなことかもしれないって思ったの。 それで 行くことに決めた!」

なつ「ふ~ん…。 はあ… モモッチまで マコさんの会社に行くのか。 何だか 取り残されていくみたいだな…。」

廊下

仲「なっちゃん。」

なつ「あっ 仲さん。」

仲「なっちゃん よかったね。」

なつ「えっ?」

仲「さっき 山川社長と佐藤制作部長から 泣きつかれてね。 君に なんとか 作画監督を引き受けてもらえるよう 説得してほしいって言われたんだ。」

なつ「そのことですか…。」

仲「昇級も約束されたそうじゃないか。」

なつ「はい…。」

仲「子どもとの時間は欲しいか。 やっぱり無理かな…。」

なつ「すいません。 それも ありますけど… 実は 作品に乗れないんです。」

仲「なるほど… そうか。 そうだとしたら 僕が君に言えることは 何もないな。」

なつ「えっ…。」

仲「こっからは なっちゃんが 自分で決めるしかない。 アニメーターとして どこを目指すか それは もう 誰も教えてはくれないだろう。」

なつ「そうですね。」

仲「僕は… なっちゃんが決めたとおりでいい。」

なつ「はい…。」

仲「うん。」

回想

仲「我々は いちアニメーターとして 奥原さんの意志を尊重したいと思います。」

なつ「今までは当たり前だと思っていたことを 会社から望まれなくなることが 一番苦しいんです!」

(拍手)

回想終了

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