道中
なつ「さっぱり分かんねえ…。」
雪月
<それから 次の日曜日 なつは 久しぶりに 帯広の街に来ました。>
妙子「ありがとうございました~。」
なつ「こんにちは。」
妙子「あ~ なっちゃん いらっしゃい。 久しぶりだね。」
なつ「お久しぶりです。 あの 雪次郎君いますか?」
妙子「うん なっちゃん待ってたよ。 すぐ呼んでくるから 座って待ってて。」
なつ「ありがとうございます。」
なつ「あっ 倉田先生。」
倉田「おっ もう来てたか。」
なつ「えっ? えっ 雪次郎君が会わせたい人って 先生のことですか?」
倉田「まあ 座れ。」
なつ「はい。」
倉田「奥原なつ。 お前… 演劇やれ。」
なつ「えっ? 何ですか!? いきなり。 」
とよ「なっちゃん な~したの? そんな大きな声出して。 ご無沙汰だね。」
なつ「とよばあちゃん お邪魔してます。」
雪之助「なっちゃん いらっしゃい。」
なつ「おじさん お久しぶりです。」
雪之助「雪次郎と ここで会う約束したんだって?」
なつ「はい。」
とよ「こらっ!」
倉田「えっ?」
とよ「高校生が たばこなんか吸うんじゃないよ! 自分で稼いでから吸うもんだよ こんなもんは。 しかし 老けて見えるね この子は。 とっても 雪次郎の同級生には見えないわ。 よっぽど苦労してきたんだろうね。」
倉田「いや 苦労と呼べるようなことは 何も。」
とよ「言うことまで老けてるね。」
なつ「違うの とよばあちゃん。」
とよ「なっちゃん 苦労というのは 人には分かんないもんだよ。」
雪次郎「倉田先生! もう来てたんですか。」
倉田「おう。」
雪之助「先生? おかしいと思った! ハハハ…。」
とよ「だから 高校生に見えないって言ったんだよ。 失礼なこと言うんじゃないよ。 ハハハハ…。 孫が いつもお世話になっております。」
倉田「ああ いえ…。」
雪之助「息子が いつもお世話になっております。」
倉田「ああ…。 こちらこそ ご挨拶が遅れまして 失礼いたしました。 演劇部の顧問をしている倉田と申します。」
とよ「ああ~…。」
雪次郎「ばあちゃんと父です。」
とよ「ばあばでございます。」
倉田「あ 痛っ…!」
雪之助「すいません ごめんなさい…!」
とよ「先生 おたばこ…。」
倉田「あ~ いえいえいえ…。」