道中
なつ「ねえ どういうこと? さっぱり分からん。 私の問題って…。 自分で 答えを見つけるって どういうことかな?」
天陽「それは なっちゃんが 柴田牧場のあるじだったら どうするのかってことじゃないのか?」
なつ「私が あるじなんか なれるわけないべさ。」
天陽「だったら もし そうだったら。 なっちゃん自身が 農協が 牛乳を集めて 売った方がいいと思うのか それか 直接 メーカーに 売った方がいいと思うのか… うん。 その答えを見つけれ ってことじゃないのかな? 違うかい?」
なつ「ねえ なして天陽君ってさ 私が 一生懸命 悩んでことに そうやって さらっと答え出せるわけ?」
天陽「ものすごく当たり前のことしか 言ってないけどな。」
なつ「うん…。」
(鳴き声)
なつ「あっ!」
天陽「えっ?」
(鳴き声)
天陽「どしたんだ?」
なつ「発情だわ。」
天陽「発情?」
なつ「牛が発情してるんだわ。 だから 落ち着きがないの。 明日の午前中までに 種牛に連れてくといいわ。」
天陽「午前中か?」
なつ「うん。」
天陽「分かった。」
なつ「あっ… ああ もう行かんと!」
(鳴き声)
柴田家
旧牛舎
なつ「ただいま。」
富士子「お帰んなさい。」
なつ「遅くなって ごめんなさい。」
富士子「いいから 着替えといで。」
なつ「母さん ワラビ採ってきた。」
富士子「どこ行ってたの?」
泰樹「天陽のところか?」
なつ「じいちゃん…。」
泰樹「子牛を見る約束だったぞ。」
なつ「あ~ 忘れてた…。 ごめんなさい。 でも やっぱり 天陽君の牛も心配で。 天陽君の牛が発情したんだわ。 今 種付けしたら 来年の春には生まれてくるね。」
泰樹「人間が発情したら どうするんだ。」
なつ「はっ?」
泰樹「世間の目も考えろ。」
なつ「何言ってんのさ じいちゃん。」
泰樹「お前らは もう子どもじゃないんだ。 世間から ふしだらと思われるようなことすんな!」
富士子「ちょっと!」
なつ「そったらこと じいちゃんが言ってるって知ったら 天陽君 悲しむよ!」
泰樹「バカ者! そう言われない方が 男として 見くびられとる!」
十勝農業高校
畜産科
太田「乳牛のメスは およそ21日ごとに 発情を繰り返す。 え~ 94ページの図にあるような 牛の卵巣中の ろ胞と 黄体の大きさの変化は ハモンドという学者が解明した。 発情を見逃すことなく…。」
良子「(大声で)なっちゃん 何描いてるの?」
なつ「シ~! やめてや よっちゃん…。」
良子「また漫画?」
なつ「漫画映画。」
校庭
雪次郎「なっちゃん! なっちゃん なっちゃん なっちゃん…。 もし 興味があるなら これ読んでみるかい?」
なつ「何? これ。 私は なんも 演劇には興味ないから。」
雪次郎「いいから読んでみなよ。 それから 今度の日曜日 うち来てくれんかな?」
なつ「雪月に?」
雪次郎「会わせたい人がいるんだわ。」
なつ「誰よ?」
雪次郎「まあ 来たら分かるさ。」