連続テレビ小説「なつぞら」第27話「なつよ、お兄ちゃんはどこに?」【第5週】

なつ「何これ 高い!」

富士子「雪月の3倍はするね。」

信哉「ここは 僕に…。」

富士子「ああ いいのさ。 ケチで言ってるわけじゃないんだから。」

なつ「でも ここで食べるのは やめとこうよ 母さん。」

富士子「そだね。」

信哉「おなかが減ってるなら大丈夫だよ。 ここのカレーは最高だから。」

なつ「いいのさ。 ケチで言ってるわけじゃないんだから。」

信哉「そう?」

佐知子「お決まりですか?」

富士子「アイスコーヒー下さい。」

信哉「僕も アイスコーヒー。」

佐知子「アイスコーヒーが お二つと…。」

なつ「冷たい牛乳ありますか?」

佐知子「アイスミルクでございますか?」

なつ「はい。 えっ… ないですか?」

佐知子「ございます。 かしこまりました。」

なつ「えっ 何か じっと見られたわ。」

富士子「うん…。」

なつ「案外おいしい。」

富士子「本当に? ちょっと頂戴。」

信哉「あっ マダムだ…。」

光子「いつも ごひいきに ありがとうございます。」

光子「いらっしゃいませ。 前島光子と申します。」

信哉「あの… マダム 以前お邪魔しました…。」

光子「覚えております。 佐々岡信哉さんでしたね。」

信哉「はい。 フルネームで…。」

光子「それで あなたが 咲太郎さんの妹さんですか?」

なつ「はい。 なつと申します。」

光子「なつさんね。」

富士子「私は 母の富士子です。 あっ 母といっても 咲太郎さんの母 というわけじゃあなくて…。」

光子「存じております。 大体のことは。 どうぞ 皆さんも お掛けになって。」 

光子「何もいらないわ。」

光子「咲太郎さん… 私たちは 咲ちゃん。 劇場のみんなからは 咲坊なんて呼ばれていましたね。」

なつ「サイボウ?」

富士子「その劇場というのは この近くにあるんでしょうか?」

光子「ええ。 ムーランルージュ新宿座。」

なつ「そこで 兄は お芝居をしてたんですか?」

光子「いいえ 役者ではなかったと思いますよ。 私は あまり劇場には 通いませんでしたので分かりませんが 掃除をしたり もぎりをしたり 裏方を手伝ったり 何でもしていたようですね。」

光子「よく ここへ 役者さんや踊り子さんに 連れられてきて ごちそうになっていましたから みんなからは かわいがられているようでしたよ。」

なつ「そうですか…。」

回想

咲太郎♬『うぬぼれのぼせて得意顔』

「オ~! ジャパニーズ チャップリン!」

咲太郎♬『東京は銀座へと来た』

「エノケン!」

回想終了

なつ「間違いないと思います。 兄は そういう人でした。 あっ 私は 子どもの頃の兄しか知りませんけど。」

(ドアの開く音)

光子「あっ。 ちょっと お待ちになって。 社長。」

茂木「やあ マダム 今日も あでやかで。」

光子「フフッ… ありがとうございます。 あの 是非 ご紹介したい方が… ちょっと よろしいでしょうか?」

茂木「ああ。」

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