子供部屋
回想
なつ「あの… 何か分けて下さい。」
「何もないよ。」
なつ<空襲のあと 私たちは家もなく 子どもだけの力で 生きなければなりませんでした>
なつ「おばあさん お願いです。 空襲で お母さんがいないんです。 妹も 死にそうで…。 最後に 何か 食べ物を分けてもらえませんか?」
「私の孫も 空襲で死んでしまってね。 孫の分まで あなたたちが食べなさい。」
なつ「ありがとうございます。」
<私は おばあさんやお孫さんに 同情する余裕すらありませんでした。 妹の千遥と生きるためには どんなことでもしようと必死でした。 自分が ずるいとさえ 思ってもいませんでした>
回想終了
夫婦の部屋
剛男「大丈夫かな あの子。」
富士子「あの子も そだけど 少しは 夕見子や照男のことも 心配して下さいよ。」
剛男「えっ なしたの?」
富士子「あなたは まだ 帰ってきてから あの子らと ちゃんと向き合ってもないんだから。」
剛男「ああ そだけど… 何しろ 2年近くも 会ってなかったからな 急に あの子らが大きくなったみたいで どう接していいか 分からないところあるな。」
富士子「あの子らだって 寂しかったんだよ。 それなのに…。」
剛男「君も反対なのか? 本当は あの子を ここに置くこと。」
富士子「いや そでないけど…。 あの子は 少し 子どもらしくないっていうか。」
剛男「そうか? 浮浪児なんかしてた割には 素直な子だと思うけどな。」
富士子「あなたには分かんないんだわ。」
剛男「おい 富士子ちゃん…。 俺も寂しいっよ。」
富士子「知りませんよ。」
剛男「ふ~じこちゃん 寂しい…。」
玄関前
なつ「わあ… きれい!」
泰樹「おい 何してる。 早く顔洗ってこい。」
なつ「はい。」
なつ「冷たっ! おいしい…!」