牛舎
泰樹「こっち来い。」
なつ「はい。 かわいい!」
悠吉「めんこいか? おやっさん この子は?」
泰樹「新しい見習いだ。」
悠吉「へえ~。」
泰樹「うちで働いてる戸村悠吉さんと 息子の菊介じゃ。 お前の先輩だ。 挨拶すれや。」
なつ「奥原なつです。 よろしくお願いします。」
菊介「よろしく。」
悠吉「なっちゃんか。 どっから来たのさ?」
なつ「東京です。」
悠吉「東京!? ああ… どっか あか抜けてるもな。」
なつ「昨日 お風呂入ったから。」
悠吉「でっかくなったら このにいちゃんの嫁にならんかい?」
なつ「はあ…。」
菊介「おやじ やめれや。 俺まで共倒れで嫌われるだろ。」
悠吉「ハハハハハハ…。 この兄ちゃん まだ こう見えて18だ。」
菊介「10歳も さば読むなって! 気にしなくていいからな。」
なつ「分かりました。」
泰樹「しばらくは そこで見てろ。」
なつ「はい。」
剛男「おはようございます!」
悠吉「あっ 剛男さん! よくぞ ご無事で。」
菊介「お帰んなさい。」
剛男「悠吉さん 菊介君 ただいま戻りました。」
悠吉「いかったな。 おやっさんも これで一安心だべ。」
剛男「今朝は 寝坊して どうも…。」
菊介「今日ぐらい 休んでればいいんでないかい。 ここは大丈夫さ。」
悠吉「そだよ~。 なんぼでも寝てればいいのに。 富士子ちゃんの横で。」
菊介「おやじ 子どもの前だ。」
剛男「いや それより 早く牛に また慣れてもらわないと 大丈夫?」
なつ「大丈夫です。」
剛男「無理しなくていいからね。」
泰樹「いるんなら ちゃんと働け。」
剛男「ああ… はい!」
剛男「よ~し よし よし よし よし…。」
(鳴き声)
悠吉「おい! 何してんだ こら! 危ないべ。 むやみ 牛に近づいちゃダメだ。」
なつ「私も手伝おうかと…。」
泰樹「見てろと言ったべ。」
剛男「牛に蹴られたら 命なくすかもしれんのさ。」
なつ「えっ…。」
悠吉「牛はな 慣れない人間が近くにいるだけで 緊張して 乳も出さんようになるの。 手伝うなら まずは 牛と仲よくならんとな。」
剛男「なっちゃん 本当に無理しなくていいからね。」
泰樹「甘やかすな。」
<それが なつが踏み込んだ 初めての酪農の世界でした。 なつよ もう こうなったら頑張れ!>
(鳴き声)