連続テレビ小説「なつぞら」第45話「なつよ、東京には気をつけろ」【第8週】

翌朝

雪次郎「あっ なっちゃん 早えなあ。」

なつ「遅いよ。 どうしても 早く目が覚めちゃって 布団の中で我慢してたんだから。 う~ん 牛が恋しい…。」

雪次郎「そう。」

なつ「おじさん 大丈夫?」

雪次郎「さっき 目 覚めて 二日酔いで苦しんでるわ。 水 持ってこいって。」 父ちゃん…。」

(雪之助の声)

なつ「あっ おはようございます。」

佐知子「おはよう。 早起きで偉いわね。」

なつ「いや 癖なんです。 あっ 自分でやります…。」

佐知子「あのさ…。」

なつ「はい?」

佐知子「これ 少ないけど… お兄さんに渡してくれる?」

なつ「えっ?」

佐知子「少しでも 足しになればと思って。」

なつ「えっ 何ですか? これ。」

佐知子「お金よ。」

なつ「えっ なして お金を…?」

佐知子「力になりたいからでしょ。 私からじゃ 遠慮して 受け取ってくれないかもしれないから あなたから渡してあげて。 ね。」

なつ「あっ あの… 兄と 何かあったんですか?」

佐知子「ハッ… やだ… まだ ないわよ。」

なつ「まだ…? えっ もしかして 兄は あなたにも 借りがあるんですか?」

佐知子「借りなんてないわよ。 私と咲ちゃんは 同志だもの。」

なつ「同志?」

佐知子「この新宿で ずっと 一緒に 強く生きていこうって誓ったの。 ハッ… やだ…。」

なつ「やだ…。 兄って どんな人なんでしょう…。 怖…。」

おでん屋・風車

1階店舗

「こんにちは。」

亜矢美「はい ご苦労さん。」

(戸が開く音)

咲太郎「ただいま!」

亜矢美「咲太郎…。」

咲太郎「何だよ しけた面して。 相変わらず不景気か? 神武景気も ここまでは 届かないか。 ま 元気出しなって 母ちゃん。」

亜矢美「あ… おでん 出来たばっかりだけど 食べるかい?」

咲太郎「うん。 風車のおでん 久しぶりだなあ。」

亜矢美「あんた また 新宿に戻ってきたの?」

咲太郎「ここしか帰る所がないだろ。」

亜矢美「で 今は何やってんの?」

咲太郎「今? 今は 新劇の劇団 手伝ってんだ。」

亜矢美「新劇?」

咲太郎「昨日は千秋楽だったんだ。 ちっとも もうからないけど うん… 役者は いいんだよ。 あっ ほら ムーランルージュも最後の方は 新劇みたいだって言われてたろ?」

亜矢美「うん…。 やっぱり そっか まだ知らないか…。」

咲太郎「えっ?」

亜矢美「それで帰ってきたってわけじゃないんだ。」

咲太郎「何の話だ?」

亜矢美「(ため息) あんたの妹 新宿に来てるよ。 北海道から。」

咲太郎「えっ なつが!」

亜矢美「あんたを捜してる。 今度は こっちで暮らすために 出てきたらしいよ。」

咲太郎「何で? 今更 俺なんか…。」

亜矢美「あれは… 追い出されたんだね。」

咲太郎「えっ… 北海道をか?」

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