連続テレビ小説「なつぞら」第4話「なつよ、ここが十勝だ」【第1週】

菓子屋・雪月

泰樹「おう やっとるか ハハ。」

とよ「お~や 柴田さん お久しぶり。 店は やってるよ。 売るもんは な~んもないけど。」

泰樹「闇屋に仕事とられたか。」

とよ「うちは 闇で商売したくないからね。 ハハハ…。」

泰樹「新鮮な牛乳と 卵を持ってきてやったぞ。」

とよ「相変わらず 恩着せがましい言い方するね。 『持ってきてやった』って そっちも商売だべさ。」

泰樹「商売にならんでいいから 何か食わせろ。」

とよ「お~や 珍しい お孫さんと一緒かい! したら しかたないね。 雪之助!」

雪之助「は~い。 柴田さん! ハッハ~ いらっしゃい!」

とよ「孫の夕見子ちゃん やっと連れてきてくれたんだわ。 お前 何か作ってやんなよ。」

雪之助「お~ 夕見子ちゃん! いらっしゃい。 お~い 妙子 雪次郎! 柴田さんがな お孫さんの夕見子ちゃん 連れてきてくれたぞ。」

妙子「まあ いらっしゃい。」

雪次郎「いらっしゃい。」

妙子「夕見子ちゃん こんにちは。 やっと会えたね。 年は 確か 雪次郎と同じだたったね。 9つでしょ?」

なつ「いいえ…。」

妙子「あれ 違った?」

なつ「あっ… そうです。 年は9つです。」

とよ「なかなかの美人でないの。 これで 性格が じいさんに 似てなきゃいいんだけどね ハハハ…。 雪次郎 とりあえず仲よくしてやんな。」

雪次郎「うん。」

なつ「友達になろうね 夕見子ちゃん。」

なつ「いや…。」

雪次郎「嫌かい…?」

とよ「はっきり言う子だね~。 やっぱ じいさんに似ちゃったんだね。」

泰樹「無駄口はいいから 何か菓子出してくれ。」

雪之助「お菓子はねえ これが もうないんだわ。 肝心の砂糖が 手に入りにくいから。 それに 鍋や釜 餡を練るへっついや 煎餅焼く型まで供出してしまって そこから集め直さないとね。」

とよ「この子まで 兵隊にとられて 帰ってきたばっかりなんだよ。」

泰樹「うちの婿も帰ってきた。」

とよ「ああ そう 戻ってきた? そりゃ いかったね~ シベリアに連れていかれなくてさ。」

泰樹「ああ。」

雪之助「よかったね 父さん帰ってきて。」

なつ「あっ… いや お父さんじゃありません。」

一同「えっ?」

とよ「衝撃的な発言。 こりゃまた たまげたこと言う子だねえ。」

泰樹「この子は 孫の夕見子ではない。」

とよ「えっ 違うの!? だったら 早く言ってや。 じゃ 誰?」

泰樹「わしの弟子じゃ。」

とよ「弟子?」

なつ「はい…。」

泰樹「自分から挨拶せえ。」

なつ「あっ 奥原なつです。 東京から来ました。 よろしくお願いします。」

雪次郎「東京から?」

妙子「東京から疎開してきたの?」

なつ「違います。」

とよ「あんた まさか さらってきたんじゃないよね?」

泰樹「何てこと言うんだ… 本当に 口の減らんババアじゃ。」

とよ「あんたに ババアと言われるほど 耄碌はしてないよ!」

なつ「ごめんなさい!」

泰樹「何で お前が謝るんだ?」

とよ「何で謝んの?」

なつ「あの お願いです 喧嘩はしないで下さい。」

泰樹「喧嘩? 何のためにもならん喧嘩はせんよ。」

とよ「アハハハ… 喧嘩なら もうちょっと言葉を選ぶよ。」

雪之助「ハハハハハ… こりゃ 母さんが悪いわ。」

妙子「驚いたでしょ? 開拓者の1世は もう 思ったこと 何でも口に出すから。 これはね じゃれてるだけなのよ。」

とよ「からかってるだけだよ。」

雪之助「柴田さん ちょうどよかった! この牛乳と卵で 何か いいもん作るわ。」

泰樹「おお 作れるか。」

雪之助「ああ 砂糖はないけど 蜂蜜が 手に入ったんで 試したいもんあったんだわ。 ハハハ… 楽しみにしててや。」

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