なつ「進駐軍の人にも 人気があって それで…。」
泰樹「妹は いくつだ?」
なつ「別れた時は5歳でした。」
泰樹「どこにいる?」
なつ「親戚の家です。」
泰樹「兄貴は?」
なつ「お兄ちゃんは… 今は孤児院にいます。」
泰樹「バラバラか… あいつも 中途半端なことをしたもんだ。」
なつ「お兄ちゃんが… おじさんに 私を頼んだんです。 おじさんは 何も悪くありません。 許してあげて下さい。」
柴田家
子供部屋
剛男「あの子を ここに連れてきたのは 夕見子がいたからだよ。」
夕見子「えっ?」
剛男「父さんは 戦地にいて 夕見子のことを想わない日は 一日もなかった。 いや 片ときもなかった。 それは あの子のお父さんも 同じだと思うんだ。 その人は亡くなって 父さんは生き残った。」
剛男「でも その人と父さんが 反対になっても 全然おかしくないんだわ。 だから 夕見子となっちゃんが 反対になっても おかしくはないんだよ。」
夕見子「そんなことは分かってるさ。 だから かわいそうだとは思ってる。」
剛男「かわいそうに思えって 言ってるわけじゃないんだ。 父さんは なっちゃんを見て どうしようもなく 夕見子のことを思ってしまったんだ。 夕見子が孤児になって 大人の人から 冷たくされていたらと思うと 父さんは たまらなかった。」
剛男「そんなことは 絶対に許したくないと思ったのさ。 夕見子を 幸せにしたいと思った。 だから 父さんは 自分のために なっちゃんを 連れてきてしまったのかもしれない。」
剛男「自分の気持ちが済むように 北海道の こんな所まで なっちゃんを連れてきてしまった。 父さんは なっちゃんの人生を 変えてしまったことになるんだ。」
夕見子「それって 私のせいってこと?」
剛男「そんなことは言ってないさ。」
夕見子「私が あの子の人生を 変えることもできるってことかい?」
剛男「無理に変えようなんて 思わなくていいんだ。 ただ 夕見子は 夕見子のまま あの子を受け入れてほしいと 父さんは そう願ってるだけだ。」
夕見子「分かったよ。」
剛男「ありがとう。」