連続テレビ小説「なつぞら」第56話「なつよ、絵に命を与えよ」【第10週】

東洋動画スタジオ

仕上課

桃代「えっ 新宿に住んでるの?」

なつ「はい。 居候ですけど。」

桃代「それじゃ 毎日 遊びに帰ってるようなもんじゃない。」

なつ「遊んでませんよ。」

桃代「そんな おしゃれして。」

なつ「これは たまたま… お下がりなんです。」

桃代「生まれたのも新宿?」

なつ「生まれたのは 日本橋の方です。 それから 北海道で育ちました。」

桃代「北海道?」

なつ「戦争で 両親を亡くしたんです。 そんで 北海道の知り合いの家に 引き取られたんです。」

桃代「へえ… 苦労したんだ。」

なつ「それが 全然 苦労はしてなくて…。 北海道が快適すぎました。」

桃代「ここでは たくましい方よ きっと。 ここは 割と お嬢さんが そろってるからね。」

なつ「そなんですか?」

桃代「うん。 まるで 会社が いい花嫁になりそうな人を 選ん集めてるみたい。」

なつ「どうしてですか?」

桃代「その方が面倒ないでしょ。 いくら 給金が安くても お金に困らない 花嫁修業中のお嬢さんなら 文句言われないでしょ。」

なつ「モモッチさんもですか?」

桃代「私は違うわよ。 お金には困ってるもの。 まあ でも 実際 みんな 遊びに来てるようなところがあるからね ここには。」

(笑い声)

山根「あんまり分かりませんけど アッハハハハ…。」

なつ「そなんですか…。」

<なつは 時間さえあれば 絵コンテを見返して 『白蛇姫』の世界を想像しました。>

なつ<『白蛇姫』は 中国の古いお話。 許仙(しゅうせん)という若者は 胡弓(こきゅう)を弾きながら 子分のパンダと 楽しく暮らしていた。 ある日許仙は 市場で 見せ物にされていた白い蛇を かわいそうに思い それを買って 逃がしてやる。 その時 許仙に恋をした白蛇は ある嵐の晩に 美しい人間の娘 白娘(パイニャン)に変身する。 そして 2人は 深く恋に落ちていく。>

なつ<その時 許仙に恋をした白蛇は ある嵐の晩に 美しい人間の娘 白娘(パイニャン)に変身する。 そして 2人は 深く恋に落ちていく。 ところが 白娘が 化け物と知った 法海(ほっかい)という偉い人がいて 兵隊を 2人に差し向ける。 許仙だけが捕らえられてしまい 白娘は嘆き悲しみ 許仙に会いたい一心で 追っていこうとする>

なつ<白娘の恋は 報われない悲劇なのか…>

作画課

なつ「それは 白娘と兵士が戦うシーンですね。」

下山「分かる?」

なつ「悲しい恋の話なんですよね 『白蛇姫』って。」

下山「おっ 勉強してるね。 まあ だからこそ こういう戦いのシーンは 面白くしたいんだよね。」

なつ「面白そうですね それ。」

下山「立ち回りはね 僕 得意だからね…。」

なつ「ハハハ…。 私も いつか 描いてみたいです。」

下山「え 描いてみる?」

なつ「えっ?」

下山「僕だって 家に帰ってから 練習してるんだよ 今でも。 ゴミ箱から拾って 先輩の絵を どんどん模写して 自分なりに描いてみるといいよ。」

なつ「はい。」

下山「うん。」

なつ「ありがとうございます。」

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