おでん屋・風車
1階店舗
なつ「ただいま。」
亜矢美「あっ お帰りなさい。 どうだった?」
なつ「うん疲れたけど なかなか楽しかったです。」
亜矢美「そう。 で こっちは…?」
なつ「あっ… この服も褒められました。」
亜矢美「ようござんした。」
なつ「ハハ…。 いらっしゃいませ。 何か お手伝いしましょうか?」
亜矢美「大丈夫。 大した客じゃないから。」
師匠「おい おい おい おい…!」
亜矢美「あっ それよりさ 奥に ごはん作ってあるから それ食べて お風呂行ってらっしゃいよ。 疲れ とらないと。」
なつ「すいません… ありがとうございます。 あの お兄ちゃんは?」
亜矢美「まだ まだ まだ まだ。」
師匠「ちょっと 何 ママ ママ ママ… 何? ママよ… ママの娘なの?」
亜矢美「まあね アッハッハッハ。」
師匠「上に お兄ちゃんもいるの?」
亜矢美「ああ 咲太郎ですか。」
師匠「えっ?」
亜矢美「咲太郎。」
師匠「咲太郎… 咲ちゃんか! 咲ちゃん 知ってるよ 俺。」
亜矢美「咲ちゃん 知ってんの?」
師匠「知ってるよ。 落語なんか やんねえかなと 思ってんだよ。 あと 合ってるとおもうは『抜け雀』。」
1階居間
なつ「わあ!」
1階店舗
弟子「『抜け雀』… 私 まだ教わってませんけど。」
師匠「おめえは いいんだよ…。 あのね 小田原の宿やでね 7日逗留した客が 一文無しだったんだ。 家賃の代わりに 雀の絵を5羽描いたんだな。 ところがさ 翌朝んなってみると ついたてから その雀が いなくなっちゃってんだよ。」
亜矢美「あら。」
師匠「なぜか?」
弟子「餌をついばむために 絵の中から 雀が抜け出したから。」
師匠「一流の芸術てえものはね 魂がこもって 描いた絵が動き出すんですよ。 ねえ。」
亜矢美「はあ~。」
2階なつの部屋
<なつは 早速 作画課で拾った絵を書き写し その技術を学ぼうとしました。>
咲太郎「なつ。」
亜矢美「なっちゃん 風邪引くよ。」
咲太郎「よいしょっと…。」
亜矢美「おやすみ。 何? それ。」
咲太郎「ん? 知らない。 タヌキか?」
翌朝
なつ「ちょっと派手じゃないですか?」
亜矢美「全然。 これくらいじゃないと。 何事もね 最初が肝心だから。 あっ この人は しゃれてんな… ってのも 最初の第一印象で決まっちゃうんだから。 初日はね ちょっと遠慮しちゃったんだけど 今日から これが私よ ビラビラビラッていかないと。」
なつ「かえって 印象悪くないですか? 新人なのに。」
亜矢美「うん? だって おしろい 塗ったくってるわけじゃないんだから ツルツル スベスベ サラサラ… はい 胸張って! 元気出して 行ってらっしゃい!」
なつ「はい 行ってきます!」
亜矢美「靴は 赤にしよう。」
なつ「赤? お兄ちゃん 行ってきます。」
咲太郎「は~い… 行ってらっしゃ~い。」