なつ「あ… すいません。」
麻子「やっぱりダメです。 やり直して下さい。」
堀内「だから どこがダメなの?」
麻子「表情が死んでるように思うんです。」
堀内「表情? 原画と同じように描いてるつもりだよ。」
麻子「だから ダメなんじゃないですか? 表情を変えずに 泣き崩れたって 何も伝わってこないんですよ。」
堀内「だったら その表情を 原画で描くべきだろ。」
麻子「動画は ただのつなぎじゃないでしょ? それじゃ面白くないでしょう? やってて面白いの? これは 戦いに敗れた白娘が 白蛇に戻ることを知って 許仙を思って泣くシーンでしょ? それを思って動かしてよ!」
堀内「う~ん…。」
麻子「もういい。 ここ 私がやる。」
中庭
麻子「何なの? あなた。」
なつ「あっ…。」
麻子「何しに来てんの? ここに。 結婚相手でも探しに来てんの?」
なつ「えっ?」
麻子「そんな おしゃればっかり気ぃ遣って。」
なつ「あ いや これは…。」
麻子「それしか考えてないんでしょ? 会社の男は みんな 自分のものみたいな 顔しちゃって。 将来の旦那に会いたいって気持ちが にじみ出てんのよ その顔から!」
なつ「はあ!?」
麻子「男 探しに来てるだけなら 目障りだから 私の前 うろちょろしないでちょうだい。」
なつ「えっ…。 はあ…。 何だべ 今の…。」
<なつよ それは 初めて味わう 何と言うか… 会社の人間関係?」
なつ「ええ…。」