亜矢美「テンヨー君っていうの。」
なつ「いや 違います。」
砂良「そらから うちの父さんから。」
なつ「えっ 弥市郎さんからも!?」
砂良「うん。 ジャン!」
なつ「出た~! 木彫りの熊!」
亜矢美「熊ちゃん…。 こういう顔してる…。 おっ 出た こっちも!」
なつ「あっ。」
亜矢美「お帰り。」
砂良「お帰んなさい。」
咲太郎「ただいま…。」
なつ「お兄ちゃん 北海道の照男兄ちゃん。 今日來るって言ってたしょ。」
咲太郎「おう! いらっしゃい。」
照男「初めまして。 あの… 照男です。 なつが いつも お世話になってます。」
咲太郎「あっ 咲太郎です。 こちらこそ なつが お世話になってます。」
亜矢美「お二人さん いい挨拶だ。」
咲太郎「何言ってんだ しょうがねえだろ。」
照男「しょうがねえべさ。」
亜矢美「まあ ゆっくりしてってよ。 みんなで おでん食べましょうよ。」
咲太郎「うん うまいな これ!」
なつ「でしょ!」
亜矢美「すごい おいしい。」
砂良「おでんも おいしいです。」
亜矢美「そう…。 たんと食べてね。 売るほどあるんだからさ。」
咲太郎「さあさあ お兄さん 飲んで飲んで! はい。」
照男「お兄さんも飲んで下さい。」
咲太郎「いやいや つがして下さいよ。 いいから いいから。 ね。」
照男「いいですか?」
咲太郎「はいはい…。」
砂良「お兄さんは 劇団やってるんですか?」
咲太郎「はい そうです。 あれです。」
砂良「ん? あっ…。」
咲太郎「今 稽古中で もうじき公演が始まります。」
照男「『人形の家』ですか。」
咲太郎「おっ 見に来る? 結婚の話だよ。」
照男「いえ… すぐ帰っちゃうんで。」
咲太郎「牛の家に?」
照男「は…。」
咲太郎「乾杯。」
照男「乾杯。」
咲太郎「おめでとう。」
照男「ありがとうございます。」
亜矢美「何か 座高が おんなじようだね…。」
2階なつの部屋
砂良「うわ~ すごい洋服!」
なつ「これ 全部 亜矢美さんの。」
砂良「へえ?。」
なつ「私も 貸してもらってんのさ。」
照男「頑張ってんな。 これが アニメーターの仕事か?」
なつ「いや 違う。 私は まだ アニメーターにはなってない。 なれるかどうかも まだ…。 全然ダメなの 下手くそで。」
砂良「だから 頑張ってるんでしょ?」
なつ「うん そうだけど…。」
砂良「お義母さんには 何て言う?」
なつ「お母さん?」
砂良「柴田さんお義母さん。」
なつ「母さんには 私は大丈夫って伝えて。 好きな仕事を頑張って 必ず夢をかなえてみせるって。」
砂良「分かった。」
なつ「うん。」
照男「亜矢美さんとも うまくいってるみたいだしな。」
なつ「うん うまくというか… すごく助けられてる。 人に助けてもらってばっかだわ 私は。」
砂良「家族が増えていくみたいで いいじゃない。」
なつ「でも… 大事な家族に まだ一人 会えてないんだわ。」
照男「妹か?」
砂良「あ… 千遥ちゃんだっけ?」
なつ「うん。 5歳の時に預けた先の親戚が どっかに引っ越しちゃってて。」
砂良「捜せないの?」
なつ「お兄ちゃんが 昔のことは とっくに忘れて 今は 幸せに暮らしてるだろうから 邪魔するなって。」