連続テレビ小説「なつぞら」第62話「なつよ、アニメーターは君だ」【第11週】

おでん屋・風車

1階店舗

なつ「びっくりしました。 人形は出てこないんです。 人形は奥さんなんです。 子どもの頃 父親に 人形のようにかわいがられてて 大人になってから 旦那さんに 人形のようにかわいがられてた奥さんが 最後に 目が覚めたと言って 家を出ていってしまうんです!」

亜矢美「うんうん… 確か そういう話だ。」

咲太郎「目覚めることが この芝居のテーマなんだから。」

なつ「私は 無理やり 家を出ようとした時 母さんに たたかれたことがあった。 そんで 目が覚めた。」

咲太郎「お前の場合は 牛の家だろ。 牛は たたけばいいが 人間は そうはいかないからな。」

なつ「牛だって たたいちゃダメだ。」

亜矢美「うんだ うんだ。」

咲太郎「長い間 女は家の中に閉じ込められてきた。 それを 解き放とうという運動なんだよ この芝居は。」

雪次郎「運動なんかじゃないです。」

咲太郎「えっ?」

雪次郎「芝居は 運動なんかじゃないです。」

亜矢美「あれ… 何か いつもと目が違わない?」

雪次郎「演劇や文学の目的は 問題の解決にあるんじゃないと イプセンは言っています。 その目的は 人間の描写です。 人間を描き出すことです。 イプセンは 詩人や哲学者として それを描いたんです。 そして それを見た観客も 詩的や哲学的になることなんですよね。」

亜矢美「キャ~ 見事に そのとおりになってる。 ね ね ね…。」

咲太郎「お前 よく勉強してんな 本当に。」

雪次郎「いや いくら本を読んでも 分からなかったことが あの人の演技を見て よく分かったんですよね。 実感できたんです。」

亜矢美「亀山蘭子?」

雪次郎「はい。」

なつ「人間の描写か…。 うん… あんな芝居も 絵に描けたら すごいな。」

2階なつの部屋

<なつは 蘭子さんの芝居を思い浮かべて 『白蛇姫』のワンシーンを 描きたくなりました。>

回想

仲「結論から言うと 不合格でした。」

なつ「自分が描きたいものに 自分の手が追いついていかないんです。 自分が下手なんだって よく分かりました。 特に きれいな線を描こうとすると 全然ダメで それが悔しくて…。」

回想終了

<それからも なつは 動画の線をきれいに描く クリーンナップの練習を続けていました。 それが できなければ どんなに気持ちを込めても 使いものになりません。>

東洋動画スタジオ

仕上課

<作画から仕上げまで 『白蛇姫』の仕事が終わると なつたちは うそのように暇になりました。>

富子「時間のある今 この間に トレースの練習をします。 トレースは 見てのとおり 動画の線を崩さず セルに写し取ることです。」

富子「同じ仕上の仕事でも その技術は 年季が必要で 彩色より 向き不向きがあると思います。 自信があるっていう人はいますか? 誰も 挑戦したい人はいませんか?」

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