仲「露木さんも 全部違う声で セリフをとり直すと言いだしてさ 新たに 役者を 2人立てたんだ。 で その一人が 赤い星座の亀山蘭子になったんだよ。」
なつ「えっ!?」
録音スタジオ
露木「これが白蛇姫です。」
蘭子「これが私?」
露木「はい。 これは 人間の姫となった白娘です。」
蘭子「これ 私に似てませんわね。 どっかの映画スターじゃないかしら? 私 こんな美人じゃありませんわよ。」
露木「あっ いえいえ 問題はありません。 顔は出ませんから。 声が美人なら もう それでいいんです。」
蘭子「まあ 正直に失礼なことおっしゃるのね。」
露木「アッハハハ… はい。 失礼しました。 この役は 亀山さんにしかできないと 私は ずっと そう思っていたんです。 先日の『人形の家』のノラ役 拝見しました。 すばらしかった。 漫画映画といえども この作品には 芝居の深みが欲しい。 スターの声なんていらないんです。」
蘭子「まあ やってみましょう。」
露木「よろしくお願いします。 それとですね こちらの侍女の小青(しゃおちん)役も お願いしたいんです。 小青というのは 青魚の妖精なんです。」
蘭子「これも 私がやりますの?」
露木「はい。 あっ 適当に 声を変えて頂いて。」
山川「豊富遊声先生が お見えになりました!」
露木「先生 おはようございます。」
遊声「いや~ おはよう。」
露木「どうぞ こちら。」
遊声「はい。」
蘭子「亀山蘭子です。 先生 よろしくお願いいたします。」
遊声「蘭子ちゃんね。 よろしく。」
露木「あの 先生 絵は 先に出来ちゃってるんで 声を絵に合わせて頂くしかないんですが。」
遊声「私は 活動弁士をやっていたんだよ。 任せなさい。」
露木「よろしくお願いします。」
蘭子『許仙様 白娘様が あなたをお待ちかねよ』。
遊声『ぱいにゃんさま?』。
蘭子『ええ。 私のご主人様 あの城のお姫様ですわ』。
露木「ちょっと待った。 ストップ。 あのね 小青は そんな やり手ババア みたいな声じゃないんですよ。 まだ 少女なんです。 少女でありながら 色気があって それでいて ちゃめっ気もあるんですよ。 ちょっと やって。」
蘭子「『許仙様 白娘様が あなたをお待ちかねよ』。 こうですか?」
露木「もうちょっと 声に しなを作って 歌うように。」
蘭子『許仙様 白娘様が あなたをお待ちかねよ』。
露木「あっ いい。 そんな感じ。 それで いきましょう。」
蘭子「あ… はい。」
露木「お願いしますよ。 はい もう一回。」