連続テレビ小説「なつぞら」第73話「なつよ、“雪月”が大ピンチ」【第13週】

東洋動画スタジオ

作画課

<一方 なつは 長編映画『わんぱく牛若丸』の作画作業 真っただ中にいるはずでしたが…。>

茜「なっちゃん 坂場さんのことで悩んでるの?」

なつ「さかば?」

茜「あっ ほら この間の 理屈っぽい演出助手の人。」

なつ「あ… 違いますよ。 ちょっと 別のこと考えてました。」

茜「別のこと?」

なつ「ちょっと 困った友人がいるんです。」

下山「なっちゃん。 これ 頼む。」

なつ「あ… これは この間の馬ですか?」

下山「うん。 僕が 原画を描き直してみたんだよ。 この絵を動かしてみてよ。」

麻子「あのカチンコ君… 坂場っていう人が直しを要求してきた 馬と牛若丸の動き。」

なつ「あれか…。」

回想

坂場「いや あおの… そこが分からないんです。 どうして こういう動きになるんですか? 牛若丸が 前のめりになるのは 性格描写として 分かることにしましょう。 けど 馬はどうですか? 馬は怖がりませんか?」

回想終了

下山「それが 僕なりの答えだ。」

なつ「答え…。」

麻子「いい? あの理屈をこね回すカチンコ君を ギャフンと言わせる動画を 描いてちょうだい。」

なつ「はい 分かりました!」

<新人アニメーターのなつは 少年 牛若丸が 馬で崖を駆け下りる 短いシーンの動画に チャレンジすることになりました。>

(笑い声)

なつ「面白い! 今度は 馬が抵抗して 牛若丸が 馬と戦ってる。」

茜「さすが アクションの下山さん 見事な修正。」

なつ「そうですよね。 牛若丸も馬も 生き生きしてる。」

彫る地「動画 頑張れよよ。」

茜「頑張ってよ なっちゃん!」

なつ「はい! よ~し!」

<しかし それは そう簡単なことではありませんでした。>

階段

なつ「あっ…。」

坂場「何か落としたんですか?」

なつ「あっ いや… 馬の気持ちと 体重移動を研究してたんです。」

坂場「ご苦労さまです。」

なつ「あっ あのカットを 今 描き直してるとこなんです。 牛若丸が 馬で崖を駆け下りる あの鵯越の逆落としを 思わせるカットです!」

坂場「そうですか。」

なつ「それから… 昨日は すいませんでした。」

坂場「その すいませんというのは 何を指して言ってるんですか?」

なつ「川村屋で 話の途中で いなくなってしまったことです。」

坂場「ああ… それは構いません。 偶然 会っただけですから 偶然 また いなくなることもあるでしょう。」

なつ「モモッチと一緒に バターカリー食べたんですか?」

坂場「いえ 私は すぐに帰りました。 それじゃ。」

なつ「あっ いえ あの… ちょっと待って下さい! 昨日の続き 教えて下さい。」

坂場「続きというのは?」

なつ「話の続きです。 アニメーションにしか できない表現とは何か 坂場さんの考えを聞こうとしてました。 聞かせて下さい。」

坂場「それは…。 やはり あなたが 自分で考えて下さい。」

なつ「えっ?」

坂場「それを いつか 私に教えて下さい。 それが きっと アニメーターに対する敬意だと思います。 あなたが 本当のアニメーターならば。 失礼します。」

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