連続テレビ小説「なつぞら」第81話「なつよ、十勝さ戻って来い」【第14週】

剛男「僕は いまだに 剛男と呼ばれたことがありませんよ。 いつも 『あれ』とか『おい』で。」

泰樹「おい… 何言ってんだ。」

剛男「ほら…。」

(笑い声)

富士子「千遥ちゃん こういうじいちゃんだから 気にしないでね。 偉そうにしてるからって 偉いと思う必要ないからね。」

千遥「いえ… すごいですね。」

富士子「ん? 何が?」

千遥「姉は… こんなに恵まれて育ったんですね。」

富士子「千遥ちゃん…。」

剛男「千遥ちゃんは… 自分のお父さんのことは覚えてないの?」

千遥「父や母のことは 全く…。 顔も思い出せないくらいで…。」

剛男「そうか… 僕は 君のお父さんと 戦地で 一緒に戦って どっちが 先に亡くなっても 残された家族に手紙を届けようって 約束したんだ。 だから 僕は 復員して すぐ 咲太郎君と なつを捜して会いに行った。 残念ながら その時 千遥ちゃん もう いなかったけど。」

千遥「はい。 そのことは 兄が 親戚のおばさんに出した手紙に 書いてありました。」

富士子「千遥ちゃんは 6歳の時に その手紙を持って おばさんの家を出たんでしょ?」

千遥「はい。」

富士子「それからは 随分 苦労したんでしょうね…。」

千遥「家出をして すぐ 私は ある人に拾われて… 東京の置屋に預けられました。」

剛男「置屋!?」

明美「おきやって?」

千遥「芸者さんのいるところ。」

明美「えっ! 千遥ちゃんは芸者さんなんかい?」

富士子「明美。」

千遥「私は まだ半人前で… お酌って呼ばれる見習いみたいなもの。 私は 運がよかったんです。 そこで みんなから お母さんと呼ばれている女将さんが とてもいい人で… 頼もしくて いいお姐さんたちにも囲まれて 私は 何不自由なく 食べるものにも困らず 今まで育ててもらいました。」

富士子「ああ…。 本当? 本当かい? 本当に 千遥ちゃんは 幸せに暮らしてたんかい?」

千遥「はい… とても幸せです。」

剛男「(泣き声)」

富士子「何さ 泣くことないしょや。」

剛男「いや… それを知ったら なつや咲太郎君だけじゃなく 亡くなられた奥原さんやお母さんも どんなに ほっとするか。」

<ありがとう 柴田君。 でも 私と家内は知っていました。 ずっと 見守っていますから。>

千遥「でも… 幸せでは 私は 姉に かないそうにありません。」

泰樹「よし。 明日は早起きして 一緒に働くべ。」

剛男「いや… 何が よしですか? 何言ってるんですか。」

千遥「はい! 私にも教えて下さい。」

剛男「えっ?」

泰樹「うん。」

子供部屋

明美「これ。」

千遥「これが 私のお姉ちゃん?」

明美「そう。 覚えてる?」

千遥「こんな人だったんだ…。 明美ちゃんに似てるね。」

明美「えっ そんなわけないしょ。」

千遥「あるわよ。 人は 一緒に暮らしてる人に 似てくるものだって。」

明美「ふ~ん… だったら うれしいけど。 千遥ちゃんにも似てるよ。」

千遥「あの 漫画映画を作ってるって…。」

富士子「ああ それが なつの夢だったの。 なつが帰ってきたら 直接聞いてみて。 何をしてるかは なつが 自分で話した方が きっと伝わると思うわ。」

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