牧場
咲太郎「なつ… なつ!」
なつ「千遥!」
居間
剛男「咲太郎君… 大きくなったな。」
咲太郎「あ… どうも。」
富士子「本当は もっと楽しい朝ごはんに なってるはずだったのに… ごめんね なつ。 何がいけなかったのか…。」
なつ「母さん… 千遥が ここに来て みんなに会って 嫌な思いをしたとは思ってないわ。 やっぱり 千遥は 私に会いたくなかったのさ きっと。」
咲太郎「それを言うなら 俺だよ… 電話も切られたし。」
富士子「あっ あれはね… 千遥ちゃん 2人のことを すっかり忘れてると思ってたらしいの。」
回想
千遥「でも 電話で 声を聞いたら… 私の姉だと分かりました…。 兄の声だと分かりました…。 そのことに 何だか驚いてしまって… 何て言えばいいのか 分からなくなって…。」
回想終了
なつ「そんなこと言ってたの? 千遥が。」
富士子「そう…。 そんなことがあってからは 千遥ちゃん すっかり明るくなってね 少しずつ 自分の話も してくれるようになったんだわ。」
なつ「話って?」
富士子「あっ… うん… 千遥ちゃん 置屋で育ったんだって。」
なつ「おきや?」
咲太郎「芸者のいる置屋ですか!?」
富士子「そう。」
剛男「だけどね そこの置屋の女将さんが とてもいい人で 千遥ちゃん 周りの人からも すごくかわいがられたって。」
富士子「自分は 運がよかったって言ってたわ。」
なつ「運がよかった? そう言ったの? 千遥が。」
富士子「うん…。 うそじゃないと思う。」
なつ「千遥は… ずっと幸せだったの?」
富士子「千遥ちゃんが 自分から そう言ってた。 だけど 東京のどこにある置屋かは 聞かなかったの。 なつや咲太郎さんに 自分から話すのが一番いいと思って…。」
信哉「ごめんくださ~い。」
剛男「信哉君だ。」
なつ「信さん?」
なつ「千遥?」
咲太郎「これが千遥か…。」
信哉「ごめん… もしかしたら この写真のせいかもしれないんだ。」
なつ「えっ?」
咲太郎「どういうことだよ? 信。」
回想
千遥「ありがとうございます。」
(シャッター音)
信哉「ごめん 驚かした?」
千遥「何ですか?」
回想終了