咲太郎「別に 劇団を辞める必要はないんだよ。 劇団の芝居をしながら 映画やラジオに出るのと同じだ。 俺の会社は 声の仕事だけを扱うだけってことだ。 赤い星座だけじゃなくて いろんな劇団にも声をかけて 役者を集めてるんだ。 俺は 日本の劇団と役者を救いたいんだ。」
なつ「救うって?」
咲太郎「声の仕事は 食えない役者の救いにもなるんだよ。」
亜矢美「どう思います? 社長。」
茂木「咲坊 俺は いいところに目をつけたなと思ってるよ。」
亜矢美「本当?」
咲太郎「本当ですか!?」
茂木「これからは いやが上でも テレビの時代にある。 放送局も増えて テレビは もう 一家に一台の時代になる。」
なつ「テレビの時代ですか…。」
咲太郎「藤正親分にも褒められたよ。」
亜矢美「親分にも話したの?」
咲太郎「うん。 一応 挨拶に行ってきたんだ。 元気にしてたよ。」
藤田「ごめん。」
亜矢美「あっ 藤正親分!」
なつ「えっ 親分!」
咲太郎「何か 今 親分の気配を感じてたところです!」
藤田「なつさんか… 元気かい?」
なつ「はい。 おかげさまで。」
亜矢美「どうぞ どうぞ。 いつものですか? 親分。」
藤田「今日は 客じゃねえんだ。 咲太郎に 頼みがあって来た。」
咲太郎「俺にですか? 何でしょう?」
藤田「おい 入れ!」
島貫「やあ 咲坊!」
咲太郎「師匠 島貫さん… 松井さんも…!」
松井「おう 咲坊 久しぶりじゃねえか。」
島貫「よう 亜矢美。」
松井「亜矢美ちゃん いい店やってんな。」
亜矢美「お久しぶりです。」
咲太郎「どうしたんですか? 2人して。」
藤田「咲太郎 お前 今度 新しい劇場を作るんだろ?」
咲太郎「はあ!?」
藤田「そこへ こいつら 出してやってくんねえか。」
島貫「どんな劇場だ? まさか ストリップじゃねえだろうな?」
松井「ぜいたく言うな。 お前は 何でも偉そうだから 師匠なんて呼ばれてんだぞ。」
咲太郎「ちょっと待って下さい 親分!」
藤田「分かってる。 そのことは もう水に流せ。 昔は ムーランで 苦楽を共にした仲間じゃねえか。」
松井「これが 博打の戦利品なんだ。 質屋に持ってけば ひょっとしたら 10万くらいになるかもしれねえぞ ああ。」
松井「あの時は悪かったな 咲坊。 お前が金に困ってたらから つい…。」
なつ「それじゃ お兄ちゃんは その人のせいで 警察に捕まったってことですか!?」
藤田「その罪は 自主して償ったんだ。 なつさん 許してやってくれ。」
松井「あれは 悪いやつから 借金のカタに取り返しただけなんだよ。 まさか通報するとは思わなかったもんな。」
島貫「『盗人たけだけしい』とは お前のことだ。」
松井「こいつと芝居すんのが嫌で あのころは やけになってたからよ。」
咲太郎「そのことは 別にいいんですよ。」
なつ「いいの?」
咲太郎「だけど 違うんですよ。 俺が作るのは 声優のプロダクションですよ。」
藤田「何だ? そりゃ。」
咲太郎「主に 吹き替えの仕事です。 ここにいるのが そういう役者です。」
松井「なるほどね…。 顔じゃ売れない役者のやることか。」
蘭子「失礼ね!」
レミ子「何言ってんのよ!」
雪次郎「あなたは 劇団赤い星座の亀山蘭子さんを 知らないんですか!」
なつ「雪次郎君 落ち着いて。 その人 シャバにはいなかったからよ。」
松井「とっくにいたよ。」
藤田「とにかく こいつらの面倒見てやれ。 な。 咲坊。」
咲太郎「分かりました。」