連続テレビ小説「なつぞら」第96話「なつよ、恋の季節が来た」【第16週】

なつ「イッキュウさん お握り食べませんか?」

坂場「ありがとうございます。 それじゃ 僕のパンをあげましょう。」

なつ「ありがとうございます。」

桃代「あっ… お握りは落とさないで下さいね。」

なつ「モモッチ!」

桃代「フフフ… 冗談でしょ。」

なつ「冗談が通じるような相手じゃないでしょ。」

桃代「そっか。」

坂場「通じますよ。 僕だって 冗談は大好きです。」

なつ「えっ そうでした?」

麻子「なっちゃんこそ 冗談と真面目の境目がない人だもんね。」

なつ「マコさん!」

麻子「何よ 文句ある?」

なつ「今 なっちゃんって呼んでくれました?」

麻子「えっ?」

なつ「マコさんに 初めて なっちゃんって呼んでもらいました!」

麻子「初めて? そうだった?」

なつ「何か うれしい!」

麻子「泣くことないでしょう!」

(笑い声)

下山「よかった よかった。 今度の短編で みんなの気持ちが ぐっと近づいたってことだ。 ね。」

神地「あっ 茜ちゃん ちょっと それ頂戴。」

茜「あっ ちょっと…! あんたは 最初から近すぎなの。」

堀内「ずうずうしいんだよ。」

神地「分かりましたよ。」

茜「あげないとは言ってないでしょ。」

神地「えっ!」

茜「はい。」

神地「あっ… 頂きます!」

なつ「ここに 作画をする前に来たかったですね。」

下山「その余裕があればね。」

なつ「ハハハ…。」

坂場「今度作る時には 必ず こういうことをやりましょう。」

なつ「はい。」

なつ「マコさん どうしたんですか? 何か 見つけました?」

麻子「見つけた。」

なつ「えっ 何を?」

麻子「私… 結婚するの。 やっと 白馬に乗った王子様を見つけました!」

茜「マコさん ちょっと よく分かんないんですけど…。」

麻子「学生の時に つきあってた人がいて 彼は 一人前の建築家を目指してて 今度 イタリアに行くことになって…。 それで プロポーズされて 別れるべきか悩んだんだけど この作品やって やっと ふんぎりがつきました。」

なつ「えっ それは… アニメーターを辞めるってことですか?」

麻子「そうよ。」

なつ「それはないですよ マコさん!」

麻子「だから 私は この作品を 絶対に成功させたかったの。 成功させて 私には これしかないって そう自分に思えたら 彼と別れることも 決心がつくかなと思ってた…。 けど 実際は反対だった…。 仕事に満足したから 結婚してもいいと思えたの。」

なつ「マコさん…。」

麻子「この先 私が もっと何かを作るためには ここで立ち止まることも 大事なのかなって思えたの。 なっちゃんやイッキュウさんと比べると 私には 何か足りないような気がして。 それが悔しくてね。」

なつ「そんなことないです! マコさんのようには 私は まだ描けません。」

麻子「楽しめないのよ。 あなたのようには まだ。 それが どうしてなのか… 才能なのか 迷いなのか ここで一旦 立ち止まって 考えてみたくなったの。」

坂場「あなたは いいアニメーターです。 少なくとも 日本には あなたのようなアニメーターは まだ そういないと思います。」

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