【行列の女神~らーめん才遊記~】3話ネタバレ

つけ麺あんざい

汐見ゆとり「お待たせしました」

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難波倫子「なんやこのけったいなつけ麺は?」

汐見ゆとり「説明は後回しにして、まずはお召し上がりください」

有栖涼「これは美味い!」

安西徳之「辛口でうま味たっぷりだ!」

福花康男「凄く複雑な味だ!これは一体どうやって?」

有栖涼「濃厚とんこつに激辛スープをベースにし、そこに砂肝やセンマイなどモツ類が色々と入ってますねー」

安西徳之「モツかー、じゃあこのレバーみたいなのは?」

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安西絵里「つるつるプルプルした独特な食感よね」

芹沢達美「血豆腐。血液を豆腐で固めたものね。でもこんな物をつけ麺の具にするなんてね」

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安西徳之「僕ら初めて聞きましたよ」

有栖涼「中国料理では割とメジャーな食材です。新鮮な動物の血に火を入れて固めた物で鍋物や麺類の具に使うんです」

汐見ゆとり「今回はカモの血で作ってみました」

芹沢達美「世界的に見れば珍しくありませんヨーロッパでは血を凝固させた「ブラッドソーセージ」」

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芹沢達美「韓国では腸詰め「スンデ」」

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芹沢達美「フィリピンの煮込み料理「ディヌグアン」」

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芹沢達美「タイの麺料理「カノムチン・ナムギョウ」なども豚の血を使った料理です」

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福花康男「そういえば日本でもスッポンの生き血を飲みますしね」

汐見ゆとり「なのでこのつけつゆも四川料理の毛血旺ベースに考案してみました」

有栖涼「毛血旺!血豆腐とモツを煮込んだ四川の激辛スープか!」

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芹沢達美「さらにつけつゆの強烈な味とのバランスを取るために麺に春雨を混ぜたわけね」

有栖涼「確かにこれは金獅子亭やグルテンハウスにも引けを取らない味ですよ」

汐見ゆとり「私のコンサルティングプランはこのつけ麺をお店の看板メニューにしてつけ麺あんざいをこの地域で一番のつけ麺屋さんにすることです!以上!」

芹沢達美「両者のプランが出そろいましたが、如何ですか?安西さん?」

安西徳之「決めました。内の店では難波さんの提案を採用させてもらいます」

有栖涼「つまり店をとんこつラーメン屋に変えると?」

汐見ゆとり「待ってください。私が提案したつけ麺のどこがいけなかったんですか?」

安西徳之「確かに汐見さんのつけ麺は凄かった。味といいインパクトといい金獅子亭やグルテンハウスとも戦える素晴らしい料理です。でも・・・私も素人じゃありませんから、悔しいけどわかります。こんなつけ麺私の腕では作れませんよ」

汐見ゆとり「そんな」

安西徳之「それにちょっと考えてみたんです。今日のこういる場じゃなくて、街を歩いていて看板を見つけた時私は普通のつけ麺屋じゃなくて果たしてこの毛血旺つけ麺を食べたいと思うかどうかって?」

福花康男「確かに新しい味や珍しい味を求めている人ならともかく、大半の人は無難な店を選ぶかもしれませんね」

安西徳之「先ほど皆さんも仰ってらっしゃってましたが血を使っていると聞いて抵抗を感じる人は多いと思うんですよね。その点難波さんのご提案なら現実的で内の店でも十分やっていけると思うんです。難波さん早速さっきのとんこつラーメンのレシピを」

汐見ゆとり「ちょっと待ってください!安西さん言ってたじゃないですか、このつけ麺激戦区にお店をだしたのは自分のつけ麺がどれぐらい通用するか試してみたかったからだって?」

安西徳之「ですから試して通用しなかったんです。汐見さんのような才能があれば別かも知れませんけど、私達にも生活がありますから」

そこで芹沢の携帯が鳴る。

芹沢達美「失礼。良いタイミングね!結果出たからもう入っていいわよ」

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河上堅吾「社長お連れしました」

安西徳之「そちらの方は?」

河上堅吾「北区でとんこつラーメン店を経営している久保さんです」

久保「ども突然押しかけまして」

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難波倫子「久保さん昨日はお世話になりました」

汐見ゆとり「もしかして、さっきのとんこつラーメンは」

芹沢達美「そう、こちらの久保さんのお店で出してるラーメンよ。味は有栖さんも認めるレベルなんだけど残念ながらそのお店はとんこつラーメンの激戦区にあって経営が厳しい状態なのよね」

有栖涼「なるほど、つまりレシピ交換しようって話しですか?」

安西徳之「レシピ交換?じゃあそちらのお店で私のつけ麺を?」

久保「清流企画さんからご提案いただいた時は私も驚いたんですけどね」

福花康男「ちょっと待ってください?とんこつラーメン屋への変更は内の難波の提案のハズですが?」

汐見ゆとり「そうですよ、どうして河上部長がその方を連れてくるんですか?」

難波倫子「そんなん決まっとるやろー?このレシピ交換は芹沢社長の提案なんや」

汐見ゆとり「本当ですか社長?」

芹沢達美「そちらの難波さんは安西さんに商売替えを勧めるためにこの周辺の店の調査をしてた。でも1からレシピを作るよりこの方が早いでしょ?ついでに久保さんのお店の問題も一度に解決できるしね」

難波倫子「1からレシピを作っても負ける気なかったですけど?」

芹沢達美「それはどうかしら?内の汐見は料理人としては一流よ?フードコンサルタントとしては三流以下だけど。コンサルとしてはあなたの方が一枚も二枚も上手だったから。今回のことは引き分けということで手を打ちましょう!」

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芹沢達美「河上さんあとの細かい契約よろしく」

河上堅吾「わかりました」

芹沢達美「では失礼します」

帰路

汐見ゆとり「納得できません」

芹沢達美「何が?」

汐見ゆとり「社長は最初から私が負けると決めつけていたってことですよね?だから新メニューのことも何も聞かなかったし、レシピ交換のお店だって事前に用意して」

芹沢達美「正解、よくできました」

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汐見ゆとり「どうしてですか?なんで私のメニューを食べもしないうちからそんなこと」

芹沢達美「そろそろ理解しなさい。料理が美味しいだけじゃ店は成功しないのよ?あなたのつけ麺は確かに美味しかった。でもね、殆どの客は複数の店を食べ比べて美味しい方を選んでるわけじゃないの。料理対決なんてマンガやテレビ番組の世界の話し、客の殆どは保守的で知名度とか誰かの推薦を頼りに店を選んで、そこで食べた味に満足して帰っていく、つまり彼らは情報を食べているのよ」

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汐見ゆとり「情報?」

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芹沢達美「そう情報よ、納得した?」

汐見ゆとり「どんなお店だって最初の条件は同じじゃないですか?つけ麺あんざいが毛血旺つけ麺で大人気になった可能性だってあったのに!」

芹沢達美「なったかも知れない。でも、ならなかったかも知れない。斬新で美味しい毛血旺つけ麺でつけ麺業界にチャレンジしたいなら他人の店で試すのではなく自分で店をだしてからにしなさい」

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芹沢達美「泣くの?」

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汐見ゆとり「泣きません」

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芹沢達美「汐見?あなたがそんなへこんだ顔をするのは初めてみるけどなんだか」

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芹沢達美「心の底からスカっとするわねー」

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