清流企画
芹沢達美「理解出来た?昨日私があなた達に何も分かってないって言った意味?」
須田正史「社長には彼があれだけのことが出来るって分かってたってことですか?」
芹沢達美「そうねやる気があったから」
汐見ゆとり「でも、上手くいかなかったかも知れないのに」
芹沢達美「そうね、でもやる気があればまた頑張るでしょ?」
須田正史「そんな、やる気があればなんでも出来るわけじゃ」
芹沢達美「確かに彼は無知で無計画で無鉄砲だった。でもね、中途半端に自分の実力を知っている人間より、その方がチャレンジ出来るって場合もあるのよ?」
汐見ゆとり「あっ」(3話の安西の言葉を思い出す)
安西徳之「こんなつけ麺私の腕では作れませんよ」
河上堅吾「須田君、飲食業、特にラーメンは高い調理技術や豊富な知識があって慎重に準備を重ねて開業したからといって成功するとは限りません」
須田正史「でも、その方が成功する確率は上がるハズです」
河上堅吾「あくまで確率の話しです。だから逆に無謀としか言えない形で店を開いても、必ず失敗するとは限らないでしょ?」
須田正史「それは・・・」
芹沢達美「私達は神様じゃない、誰が成功して誰が失敗するかなんて事前に予測するのは不可能よ。でもだからこそフードコンサルティングビジネスに携わるものは「やる」と言っているクライアントに「やるな」という助言だけは絶対にしてはならない」
汐見ゆとり「それってどんなに失敗しそうでもですか?」
芹沢達美「当然よ。私達はやるといった人間に採算の取れる範囲内でベストな助力をするだけ。やることのリスクはそのクライアントに背負ってもらうしかないんだから」
河上堅吾「まあスープが美味く出来たのは偶々今日だけだったという可能性もありますからね。今後もコンスタントに出来るようにフォローの方はしてくださいね」
汐見ゆとり「分かりました」
電話が鳴り夏川が電話に出る
夏川彩「はい清流企画です。はい?少々お待ちください。」
夏川彩「社長、さかな居酒屋ほんだのご主人からです。なんだか凄くご立腹で」
さかな居酒屋ほんだ
相川鉄也「遅くなってすいません」
本多信和「来たか兄ちゃん、清流企画さんも今来たところだ。ちょった厨房見てみろ!」
須田正史「これって・・・」
本多信和「4時に来て仕込み始めてちょっと水使ったらこの有様だ。店開けて初日に何してくれたんだ一体?」
芹沢達美「グリストラップが詰まったのよ・・・」
相川鉄也「グリストラップ?」
須田正史「そこの鉄の蓋の下にある、油水分離阻集器のことだよ。業務用の厨房には設置が義務付けられてるんだ」
汐見ゆとり「飲食店では一般家庭なんかよりずっと油分や残飯を含んだ排水が出ます」
芹沢達美「こちらみたいに魚料理中心の店ではラーメンみたいに油を大量に使うことはないもの」
相川鉄也「じゃあ詰まったのって、俺が昨日スープの試作ドバドバ捨てたから・・・」
芹沢達美「本多さん、これは私どもがクライアントをしっかりアシスト出来なかったことが原因です。大至急清掃した上で損害分を保証させていただきますので」
本多信和「いや、ちゃんとやってくれりゃ、それでいいからさ」
芹沢達美「須田、汐見手伝って」
相川鉄也「あの俺のせいでこうなったんだから、俺が自分で」
芹沢達美「これはあなたのミスじゃない。私達のサポートが行き届かなかったのが原因よ」
すっかり日も暮れ清掃終了
芹沢達美「清掃終了しました」
本多信和「ご苦労さん、一服してくれ。その兄ちゃんもよ」
汐見ゆとり「相川さん?」
本多信和「おいおい何泣いてんだよ?兄ちゃん?」
相川鉄也「俺・・・情けなくて、須田さんの言ってた通りだから」
須田正史「え?僕?」
相川鉄也「華やかなとこしか見てなくて職人の苦労も知らない、店の借り方も、ラーメンの作り方も知らなくて、挙句の果てにみんなに迷惑をかけちゃった」
汐見ゆとり「そんな」
相川鉄也「本当すいませんでした。俺が店やるなんて10年早いって思い知りました。昨日の7万は迷惑かけたお詫びに置いていきますから」
本多信和「兄ちゃん待てよ!お前まさかラーメン屋辞めるとか言い出すんじゃないだろうな?」
相川鉄也「いや、でも」
馬鹿野郎!おまえ一回失敗したぐらいで簡単に物事投げ出すんじゃねーよ!
汐見ゆとり「じゃあこれからも相川さんにはこちらのお店を?」
本多信和「当たり前だろ?あんたらがしっかりとフォローしてもうこんなことが起こらないようにしてやってくれよ」
須田正史「ありがとうございます!」
相川鉄也「須田さん」
帰路で作戦会議する一行
芹沢達美「まず別のラーメンを用意するしかないわね」
相川鉄也「えっ?別のラーメンって?」
須田正史「確かに同じことが起きないよう、ベジポタスープはもう使わない方が良いと思います」
汐見ゆとり「じゃあ具体的にはどういう?」
芹沢達美「条件は4つ!「あの厨房の設備に負担をかけないこと」「調理にあまり手間がかからないこと」「原価率を低く抑えること」そして「インパクトと満足感」そういうラーメンをあなた達でしっかり考えなさい」
汐見ゆとり「どれぐらいの期間でですか?」
芹沢達美「三日以内!」
須田正史「みっ三日!」
芹沢達美「あら?素人の相川君が一晩でお店に出せるレベルのスープ作ったのよ?自信ないわけ?」
清流企画の調理室
須田正史「改めて考えるとかなり難しいよ。原価率を抑えて相川君に作れる物となると凝ったスープは無理だから」
汐見ゆとり「一番シンプルなのは、やっぱり「しょうゆラーメン」ですかね」
相川鉄也「でも、それでインパクトと満足感ってでるか?」
須田正史「できないね、せめて油をたっぷり使えればやりようはあるかも知れないけど」
汐見ゆとり「グリストラップがまた詰まりますよ」
相川鉄也「それじゃあ八方塞がりじゃんよー」
須田正史「大丈夫このメニューに僕の約20年のラオタ知識を注ぎ込む!ただのラオタで終わりたくないから」
汐見ゆとり「そうですよ!私だってヨレヨレの雑誌じゃありません!」
相川鉄也「え?ヨレヨレの雑誌?」
汐見ゆとり「相川さんも一緒に頑張りましょう!これがクリア出来なかったら、無知で無計画で無鉄砲で無謀なただのバカで終わっちゃいますよ!」
相川鉄也「え?俺そんな酷い言われようだったの?」
そして試作を繰り返す3人
そして3日目
汐見ゆとり「油・・お手軽に・・・節約・・強烈」
夏川彩「来てるね」
白坂隼人「大分来てますね」
芹沢達美「どうだった様子は?」
夏川彩「なんか黒魔術みたいな感じでした」
白坂隼人「男性陣の方が屍になってましたよ」
芹沢達美「ラオタも料理バカも案外、頭が固いみたいね」
河上堅吾「ヒントを与えてあげますか?」
芹沢達美「仕方ないでしょうタイムリミットが近いんだから」
須田のブログの7年前の記事にに河上が「いいね!」をする。
そのラーメンは作り方が独特なことからヒントを得た須田
今度は社長から3年前に行った店の記事に「いいね!」をされる。
この店のトマトラーメンから更にヒントを得ることに
須田正史「行けるかも」
汐見ゆとり「これ行けますね」
相川鉄也「どこに?」