不動産屋にて
相川鉄也「これだよ賃料8万の奴」
不動産屋「これは予算オーバーですよ保障金6ヶ月分で48万円ですから」
汐見ゆとり「保証金?」
不動産屋「所謂敷金のことですけど、店舗物件の場合居住物件より多めに取るもんなんですよ」
相川鉄也「他に安い物件ないんですか?」
須田正史「立地の悪いボロ物件ならあるだろうけど普通は平均して10ヶ月、立地の良い駅前の繁華街だと20ヶ月、30ヶ月分なんて物件なんてのもあるくらいだから」
不動産屋「それに合わせて、礼金2ヶ月分、仲介手数料1ヶ月分、前家賃1ヶ月分、あと火災保険なんかも必要になってきます」
須田正史「手持ちがなければ融資を申し込むって手もあるけど、相川さんの年齢と経歴を考えたら難しいだろうし」
汐見ゆとり「そんな」
須田正史「とりあえず予算内の物件全部見せてもらえますか?この二人に現実を知ってもらういい機会なんで」
物件を見学する一行
不動産屋「ここがラストですよ」
相川鉄也「探せばあるじゃないですか?」
不動産屋「このスケルトン物件が賃料7万、保証金2、礼金2、前家賃1、仲介手数料1、で7万×6ヶ月分で42万です」
相川鉄也「イエーイ」
汐見ゆとり「いやスケルトン物件っていうのは、つまり中に何もないから1からお店を作るってことですよね?」
須田正史「そうだよだからつまり?」
汐見ゆとり「相川さん、ここを借りてもお店は開けません」
相川鉄也「なんで?」
汐見ゆとり「設備を整える予算がないんです。厨房設備の他にテーブルやイス、あとラーメン作る食材費なんかも合せて計算すると不可能です」
相川鉄也「でもさ、そういうのが全部揃った物件っていうのがあるんだろ?居合い抜きとかいうさ」
須田正史「居抜き物件ね!まあ確かに設備は整ってるけど」
須田正史「そのためには造作設備譲渡金ってのが別途必要になるんだよ!いい条件の店だとそれなりに高額だし」
汐見ゆとり「じゃあ相川さんの予算50万弱で借りられる物件は」
須田正史「ない、そんなものはないんだよ」
清流企画
須田正史「昨日預かった着手金3万交通費以外は返しますよ。最初から無理だってちゃんと説明すれば一日無駄にすることはなかったわけだし」
汐見ゆとり「すいません」
須田正史「どこかのお店でちゃんと修業して資金が貯まったらもう一度来てください。じゃあ書類取ってきます」
芹沢達美「相川鉄也さん?あなたラーメン屋を開きたくて内に依頼したのよね?」
相川鉄也「そうっスけど」
芹沢達美「じゃあ聞くけど、あなたラーメン屋をやりたいの?それともラーメン屋を持ちたいの?どっち?」
相川鉄也「は?」
汐見ゆとり「どういう意味ですか?それ?」
芹沢達美「ラーメン屋をやりたい・・・だったら50弱でも打つ手はあるってこと」
相川鉄也「本当っスか?!」
さかな居酒屋ほんだ
芹沢達美「こちらのご主人・本多さんは毎日夕方4時から店で仕込みをして6時から11時まで営業なさってます。つまり日中このお店は空いているってわけ」
汐見ゆとり「じゃあ、その日中だけお店を貸して頂いてラーメン屋さんを開けばいいってことですか?」
芹沢達美「そう!こういう店の間借りは最近増えているの、そうよね?須田?」
須田正史「居酒屋さんがお弁当屋さんに貸すとかバーが古着屋さんに貸すとか、それに同じ店舗でも昼と夜で別々のラーメン屋さんが営業しているってケースも・・・」
相川鉄也「なんだよ?最初からそういうの知ってたんなら真っ先に教えてくれよ?」
須田正史「僕には伝手がなかったから・・・」
本多信和「まあ内もな不景気で売上落ちてるしよ、少しでも収入の足しになればと思ってな」
汐見ゆとり「だから社長は店をやりたいのか、持ちたいのかって聞いたんですね」
芹沢達美「このお店はあくまでも本多さんの持ち物だけど昼だけならラーメン屋をやれるわ。どうする相川君?」
相川鉄也「あの家賃は?」
本多信和「光熱費込みで7万ポッキリだよ」
相川鉄也「7万!」
本多信和「権利金とかめんどくせーことは言わねーよ」
芹沢社長本当にありがとうございます!
相川鉄也「本多さん、このお店をお借りします。そして今日からよろしくお願いします!」
本多信和「おいおいお前準備もしないでいきなり今日からかよ?」
相川鉄也「急がないとほら!もらって下さい!」
相川鉄也「お店が決まったから次はラーメンの作り方一からお願いします」
汐見ゆとり「作り方を一からって、それも全く経験ないんですか?」
相川鉄也「インスタントくらいなら作ったことあるよ。でも俺アイディアなら色々考えてるから!」
須田正史「君ねー」
芹沢達美「須田、いいから教えてあげなさい。それから汐見も」
汐見ゆとり「いいんですか?私もラーメン作りに参加して?」
芹沢達美「いつまでもウジウジしてないで思いっきり腕を振るいなさい。料理教室の教えるのと同じでしょ?」
汐見ゆとり「でも?」
芹沢達美「大丈夫よ、彼ならちょうどつり合いがとれてるから」
汐見ゆとり「つり合い?」
清流企画の調理室
相川のアイディアを基に味噌を焼いて試作ラーメンを作るゆとり
「カレー味のタンメン」や「さっぱり系のつけ麺」を提案する相川
できないと否定する須田だったが
汐見ゆとり「出来ますよ!両方」
相川・須田「そんな簡単に?!」
汐見ゆとり「どうぞ試食してみてください!」
ズッキーニの入った味噌を焼いたラーメン
キーマカレーのタンメン
冷やしつけ麺とゆずポン酢とカツオジュレ
どの料理も好評だったのだが、須田が相川を怒らせてしまう
須田とゆとりに呆れる芹沢
芹沢達美「本当にあなた達はまだまだ何も分かってないのね。そのままじゃ「ただのラオタ」「ただのヨレヨレ雑誌」で終わるわよ!」
須田正史「ただのラオタって」
汐見ゆとり「ヨレヨレはまだ良いですけど、雑誌って、せめて人間扱いしてください!」
芹沢達美「うるさい!とにかく今日はもう帰りなさい!」
帰宅途中の相川の携帯に清流企画から着信が入る
翌日、相川と連絡がつかなくて悩むゆとりと須田だったが、相川からメッセージが入る。
須田正史「ラーメン相川って!」
須田正史「お客さんも結構入っている」
相川鉄也「ラーメン二丁お待ちどう!」
汐見ゆとり「いただきます!」
相川鉄也「麺はさ、スーパーの市販の生麺なんだけど。スープはなかなかの出来でしょ?」
汐見ゆとり「ねっとりして、こってりしてるのにさっぱりしてる、独特だけど凄くワクワクする味です!」
相川鉄也「昨日お宅の会社飛び出して家に帰ってる途中でね。河上さんって方から電話もらってさ」
相川の下にアフターケアで河上が訪れていたとのこと。
そして独学の一夜漬けでベジポタスープを完成させた相川だった。