和彦「振り返ると 遠くで その子が倒れてるのが見えた。 戻ろうと思っても 艦砲射撃は続いて…。 奥さんと とにかく逃げた。 戦争が終わって 嘉手刈さんは その場所に その子を捜しに出た。」
和彦「でも 丘は削られ 地形まで変わってしまっていて どうしても 見つからなかった。 嘉手刈さんは 言ってた。」
和彦「『遺骨収集について いろんな人が いろんなことを言う。 でも 自分には 難しいことは何も分からない。 何も 褒められることなんかじゃない。 自分は ただ 誰にも言えず ずっと あの子を 捜しているだけなんです』って。」
和彦「僕は この手を 絶対に離したくない。 嘉手刈さんの分まで。 絶対に 絶対に 離したくないんだ。 暢子。」
暢子「ゆうべ お母ちゃんが お父ちゃんと出会ってからのことを 初めて話してくれた。 うちは 恋愛とか結婚には 向いてないと 諦めていた。 うちの人生に そういうの関係ないって。 だけど ゆうべ お母ちゃんの話を聞いて 当たり前のことに 気付いたわけ。」
暢子「お父ちゃんと お母ちゃんが 恋をして 幸せになりたくて 結婚してくれたから うちは 生きている。 うちも 幸せになりたい。 とことん幸せになりたい。 幸せになりたくて なりたくて ちむどんどんしてる。 絶対 何があっても諦めない。」
和彦「暢子…。」
暢子「うち 和彦君のことが好き。 和彦君…。 うちと 結婚してください。」
和彦「うん。 結婚しよう。」