執務室
佐山「野本さん。」
野本「はい。」
佐山「途中まで一緒に帰ってもいいですか?」
野本「あ はい。」
道中
佐山「そうなんですね。 家探し。 お二人で住むから大変 ってこともありますよね。」
野本「あ うん。 そうですね。」
佐山「私が全然知らないような苦労とか… そりゃ ありますよね。」
野本「え?」
佐山「あ いえ… さっき結婚の話 したあとに はっとして。 私 結婚できなくてもいいなとか 結婚したらゴールなのかなとか 自分が結婚できる立場だから 言えることだったなって。」
野本「ああ…。」
佐山「あの 野本さんのことを 全然何も考えないで 口にしてしまって。 すいませんでした。」
野本「あ ううん。 うん… でも そうだね。 話してくれてありがとう。 本当のこと言うと 少しさみしい気持ちにはなってました。」
佐山「本当に ごめんなさい。」
野本「あ いや そうじゃなくて。 あの 結婚が できる立場とか できない立場があると こういうふうに 佐山さんは そっか 結婚できるんだよなとか 私は できないんだなとか 考えてしまうのが。」
佐山「はい。」
野本「結婚したくないとか したいとか そういう話を 当たり前に 同じ立場で 佐山さんとできないんだなって。 それは ちょっと さみしいなって。 あと 最近 家探しのことで いろいろあったのもあって。 そういう気持ちにはなってました。」
佐山「何か むかついてきますね。」
野本「え?」
佐山「何で日本はできないんですかね。 同性婚。 はあ… おかしいですよね。」
野本「そうですね…。 行きましょう。」
佐山「すいません。」
野本「でも 佐山さんが結婚とか気にしてるって 少し意外な感じがしました。 気にならないかと思った。」
佐山「いや… 自分でもそういう人間だと思ってたんですけどね。 意外とやっぱり 真に受けちゃって。」
野本「社会の圧的な…?」
佐山「う~ん そうです。 20代のうちに結婚しなきゃ終わりみたいな。 ばかみたいだけど。」
野本「そっか。」
佐山「あと 去年 姉に子どもが生まれたんですけど そしたら次は 私 みたいな 親からの圧力もあったりして。 ほんとは そういうのもあって アプリも始めたんだと思います。」
野本「そうだったんですね。」
佐山「はい。」
野本「うん… でも 分かる。 私も親からの圧 全然あるし。」
佐山「ほんとですか?」
野本「うん。 いい人いないの? とか。 ちょっと 人と出かけるって言うと えっ どんな人? とか。 まあ 親も安心したいんだと 思うんですけど。」
佐山「めちゃくちゃ分かります。」
野本「私は今は 親が期待していたのとは 違う道を進んでるだろうから。 女性とつきあってることも 言ってはないんですけど。 でも そういう圧って いろんなところからありますよね。」
佐山「そうなんですよ。 あ~ もう何なんですかね。 こういうふうに生きるのが正解とか ないはずなのに 何でこんな… 圧力に押しつぶされそうになりながら 生きなきゃいけないんですかね。」
野本「そうですね。」
マンション
野本宅
野本「ごちそうさまでした。」
春日「ごちそうさまでした。」
野本「はあ~ おなかいっぱい。」
春日「片づけ 私やります。」
野本「ううん 一緒にやろう。」
春日「はい。」
(通知音)
野本「ちょっとごめんね。 矢子さんだ。 あっ。 ねえ 不動産屋さんの情報 送られてきたよ。」
春日「助かりますね。」
野本「ね~。 一緒に見よ。」
春日「はい。」
野本「これだって。」
春日「当事者が運営 プライバシーへの配慮。 既に安心感がありますね。」