北栄総合病院
容子「よかったわ大した事なくて。」
恵里「はい。」
容子「ペンネーム だったんだね。」
恵里「はい。 なんかイメージ 違いますよね? 真理亜さんは『真理亜さん』って感じですよね。」
容子「そうだね。」
恵里「容子さんは 知らなかったんですか?」
容子「あのアパートに来た時は『城ノ内真理亜です』って言ってた。」
恵里「へえ!」
容子「かわいかった。 丸い眼鏡かけてね かわいい花柄のワンピースなんか 着て。」
恵里「え!」
容子「それでさ。『今後こちらに住む事になりました 城ノ内真理亜ですぅ』って言って。」
恵里「想像できないねぇ。」
容子「だよね。 あ よそう あんまり言うと しかられるから。」
真理亜「何?」
2人「おはよう!」
真理亜「まさか ここで『ゆんたく』してた わけじゃないでしょうね。」
恵里「何 言ってるんですか そんなわけ ないでしょう?」
真理亜「分んないわよ あんた達の事だから。」
容子「病気の時ぐらい 憎まれ口 たたくもんじゃありません。」
真理亜「ふん。」
恵里「あ 真理亜さん。 しばらく入院する事になります。」
真理亜「え! 入院?」
恵里「後で 担当の医師と看護婦から 説明がありますからね。」
真理亜「あ そう!」
恵里「はい。」
容子「恵里ちゃんに言って 個室にしといてもらったからね。 あんたみたいなのは 大部屋じゃ ダメ。 部屋の人にも 迷惑だしね。」
真理亜「何 それ!」
容子「分かった? 看護婦さんの言う事よく聞くのよ。」
恵里「そうですよ。 看護婦さんの中には私も含まれる。 厳しいですよ。 覚悟して下さいよ。」
真理亜「何よ 分かったわよ。」
恵里「真理亜さん ご家族は?」
真理亜「いない そんなもの。」
恵里「え?」
真理亜「いないの!」
(ノック)
奈々子「失礼します! あ お目覚めですか? 田中さん。」
真理亜「え! な 何で『田中さん』なの?」
奈々子「え? 田中久子さんでは?」
真理亜「うわ!」
恵里「あ すみません。 カルテは ペンネームでは ダメなので 容子さんに聞いて…。」
容子「みづえさんから聞いたの。」
恵里「すみません。」
真理亜「私の名前は城ノ内真理亜だからね。『田中』と言っても返事しないから。」
奈々子「いや でも…。」
恵里「真理亜さん それじゃ 困るんです。」
真理亜「あ そう! 分かった。」
恵里「すみません。」
真理亜「帰る!」
恵里「真理亜さん!」
容子「何やってんのよ!」
真理亜「そこの紙袋 よこしなさいよ!」
恵里「ダメですよ!」
容子「危ないでしょ!」
真理亜「うるさ~い!」
奈々子「し~っ!」
ナースステーション
聡子「しょうがないわね。 そこまで かたくななんじゃ。」
恵里「はい。」
奈々子「本気で帰ろうとしてたね。」
祥子「そうなんですか?」
恵里「気をつけてね。『田中さん』なんて言ったら 噛みつくかもしれませんからね
! 皆さんも 気をつけて。 本当に 噛みつきますから!」
聡子 奈々子 祥子「うわ!」
真理亜の病室
祥子「どうですか? 田中さん。」
真理亜「ん!」
祥子「ごめんなさい!」
そんな訳で 真理亜さんの入院生活は スタートしました。 虫垂炎の場合 しばらくは絶食なのだそうです。 食いしん坊の真理亜さんには つらいねぇ