ハナ「神様が『ここに来なさい』って 言うたのかね?」
静子「あの子も そう言ってました。 『運命なんだよ』って…。 『だから どうしても行きたい… この島で 僕は死にたい』って…。」
静子「だから来ました。 でも 私 最後まで反対したんです。 医療施設の事を考えると 東京に いた方が いいに決まってるし。 主人は東京で 小さな貿易会社 経営してますから 生活のことを 考えると 一緒には来られないし。 」
静子「主治医に相談しました。『それだけ行きたがってるのなら その場所に行けば あの子の生きる力が強くなるかもしれない』って…。 だから来ました。」
勝子「そうですか…。 この島にも 診療所はあるし 石垣には 総合病院もあります。 一応 連絡しておきましょうね。」
静子「ありがとうございます。」
恵文「神様が連れてきてくれた お客さんだね。 ゆっくりやっていって下さいねえ。」
静子「はい。 ありがとうございます。」
ハナ「 イチャリバ チョーデー ヌー ヒダティヌ アガ。」
静子「え?」
ハナ「沖縄では『一度 会えば 皆 兄弟。 何の隔てがあるか』と言うわけ。」
静子「は…。」
和也と文也
和也「文也…。」
文也「ん?」
和也「恵里 かわいい子だよな。」
文也「そうか?」
和也「俺の頼み 聞いてくれるか?」
文也「何?」
和也「ここに いつまで いられるか 分かんないけど…。 この島での事 見た事 感じた事… 忘れないでくれ。 いっぱい楽しんでくれ。 それで… ずっと覚えててくれよ。 な!」
文也「なんで?」
和也「だってさ その思い出の中には 俺がいるだろ? だから… ずっと覚えててくれ。」
文也「分かったよ。」
和也「恵里の事 好きになっても いいんだぞ。」
文也「うるせえよ!」
和也君は 文也君が 泣き顔を見せまいとして 部屋を出て行ったのだと 分かっていました
静子「文也 どうしたの?」
静子「文也…。 ごめんね…。 ごめんね 文也。」
静子「泣かないで… 文也。 分かったから…。」
恵里には 事情は 分かりませんでした。 ですが 和也君の病気も 文也君の つらい事も
『きっと 八重山のてぃだ・太陽に当たって海を見ていれば 消えてしまうに違いない』 そう信じていました…